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第701話(フレイン視点)

 中身がどうこう言うのは後回しだ。とにかく、アクセルが復活しないことには話にならない。一緒にいれば……他のことは何とかなるだろう。 「よかろう。では死者の国から『アクセルの欠片』を集めてくるとよい」 「アクセルの欠片……ですか」 「全ての魂は、死者の国の最深部に集められる。消滅した者も例外ではない。数多ある魂の中から『アクセルの欠片』を持ち帰ることができたら、復活させてやろう」 「承知しました」  具体的にどんな魔法を使って蘇らせるのか、フレインには想像できない。だけどオーディンが「復活させてやる」と言った以上、嘘ではないだろうと思った。最高神の誇りにかけて、その約束を違えることはないだろうと思った。  フレインは立ち上がりつつ、言った。 「では私は、これから死者の国に行って参ります。弟の欠片を手に入れたら、また戻って参ります」 「せいぜい上手くやるといい。自分が死なない程度にな」 「ありがとうございます。では」  軽く一礼し、すぐさまオーディンの御前から引き返す。  そして二羽のカラスが騒ぎ立てる中、急いで階段を駆け下りた。  ――死者の国の深層部……それならマスクを用意しておかないと……。  生きている者が死者の国に行くと、瘴気に身体を蝕まれる。深層部になればなるほど瘴気は濃くなり、ノーマスクだと五分も経たずに死んでしまうと言われているのだ。  自分が死んだら元も子もないので、その対策はしておかなければならない。 「あ、フレインだ。おかえり~! オーディン様とお話できた?」  階段下では、ミューがピピに寄り掛かってペロペロキャンディーを舐めていた。洋服がところどころ汚れたり破れたりしていたが、たいした怪我はしていないらしい。  一方のブリュンヒルデは、苦々しい顔でミューを見張っていた。彼女はこちらを見るなり、不愉快そうに言った。

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