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第702話(フレイン視点)

「早くこの者を連れ帰ってください。そして、二度と父の屋敷に立ち入らないようにしてください」 「え、ええ……もちろん帰りますが……」  ちらりとミューに視線を送り、「何をしたの?」と無言で尋ねる。  するとミューは、しれっとこんなことを言い出した。 「いやね。このお姉さん、自分から斬りかかってきたのに、僕の方が優勢になると急に魔法使ってきてさー。なんかずるいなって思ったから、僕も神器で応戦してやったんだ。そしたら『神器は反則です!』なんて言い出してね。他の人にも止められたんで、戦闘が中断しちゃったの。別に僕は構わなかったんだけど、お姉さんは不満みたいで、ずーっとこっちを睨んでくるんだよね。困っちゃうよねー」 「何を言っているのですか。もとはと言えば、我々に何の断りもなく父に面会しようとしたそちらに非があるんです。私はそれを処断しようとしただけです」 「……といった調子で、『こっちが悪い』の一点張りなんだ。話が通じないってめんどくさいなー」  と、ペロペロキャンディーを咥えるミュー。  これ以上騒ぎになるのも面倒だったので、フレインは早々にミューとピピを連れてその場を立ち去った。  そして世界樹(ユグドラシル)を通ってヴァルハラに戻る途中に、ちょっと聞いてみた。 「ミュー、今更だけどきみの神器って何だっけ?」 「え? ミョルニルだけど。ほら、トール様のミョルニルのレプリカ」 「ミョルニルか……それはまたすごいものを与えられたね」 「うん、当たった時はすごい快感だよ。重いから扱いは難しいけどねー」  このランキング一位の戦士(エインヘリヤル)は、小さな身体の割にとんでもない戦闘力を発揮するから恐れ入る。  少し苦笑いしつつ、フレインは急いで自宅に戻った。そして狩りの時にも使用する特殊なマスクを掴み、再び世界樹(ユグドラシル)に向かった。

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