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第704話(フレイン視点)
「私、普段ならこんな服着ないのよ。でも誰かに言われていつの間にか習慣になってて……。そうよ、アクセルってヤツに『服を着た方がいい』って言われたんだわ。やっと思い出した」
「思い出していただけて何よりです。では私は急ぐので、これで……」
「待って。あんた、アクセルの欠片を探しに来たって言ったわよね? それってつまり、今から最深部に乗り込もうってこと?」
「ええ、そうですが」
そう答えたら、女王 は首を横に振った。
「残念だけど、最深部で何かを探し回るには生身の人間じゃ無理だわ。マスクをしていても五分ももたない。私ですら気持ち悪くなるくらいだもの」
「……そうですか。ですが、それでもやらなければならないんです。必ず復活させると約束したので」
「でも、あんたが死んだら元も子もないじゃない」
「はい。だから五分以内に戻ってきます。ヤドリギの欠片もありますし……どうにかなるでしょう」
「ヤドリギの欠片って?」
怪訝な顔をしている女王 に、フレインは懐からヤドリギの欠片を出して見せた。種の先から出ている双葉が、何かを探すようにぴょこぴょこ動いている。
「バルドル様が授けてくれたんです。これは元のヤドリギから分かれたもので、本体と引き合う性質があるそうです。アクセルはヤドリギの本体を持っていましたので、これがあれば早く見つけられるかと」
「ふーん……? 確かに、闇雲に捜し回るより効率よさそうね」
女王 は腰に手を当てた。そしてヤドリギの欠片を掴んで、言った。
「いいわ、私が行ってきてあげる。あんたはここで待ってなさい」
「えっ……? いえ、それは……」
「最深部に閉じ込められた『魂』は、それこそ星の数ほどあるの。いくらヤドリギがあっても、五分以内じゃ見つけられないわ。あんたが行っても、無駄に命を落とすだけよ」
「はあ、ですが……」
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