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第708話(フレイン視点)
本当は自分で届けに行きたかった。そうでなくては意味がなかった。そもそも、自分以外の別の人が代理で届けに行ったら、頭の固いブリュンヒルデにまた妨害されそうである。
だけど……今の自分はオーディンのところまで行く体力がない。あの天まで続く階段を自力で昇れる気がしない。
「わかった……ありがと……」
やむにやまれず、フレインはよろよろと立ち上がった。そして吐血しながら棺が並んでいる「オーディンの館」に向かった。
ピピも後ろからついてきてくれたが、あまりにフラフラしているのを見かねたのか、途中で背中に乗せてくれた。
――ああもう、本当に情けない……。
結局自分はほとんど何もしていない。オーディンに面会できたのもバルドルやミューのおかげだし、アクセルの欠片をとってきてくれたのは女王 である。それを届けてくれるのはジークだし、肝心の自分は瘴気にやられて死にかけている始末だ。今も自力で歩けず、ピピに運ばれている状況である。なんて情けないんだろう。
――こんなんじゃ、再会した時幻滅されちゃうかな……。
それとも、アクセルのことだから「そんなボロボロになってまで復活を急がなくていい!」と怒るだろうか。あの弟は兄想いの優しい子だから、自分のために兄が死にかけたと知ったら、逆に悲しむかもしれない。
だけど、大事な弟の復活くらい全部自分で成し遂げたかった……と、ぼんやりした頭で考える。
「ぴー……」
オーディンの館の前に到着し、ピピが気遣うように声をかけてきた。
もう指を動かすのも億劫だったが、最期の力を振り絞ってフレインはピピの背から下りた。館の出入口には五段くらいの短い階段があったが、一段目を上った時点で息切れしてしまった。
棺にも入れず力尽きるのかな……と思っていると、
「おや、フレインではないですか。随分無様な格好ですねぇ」
館から出てきたユーベルに発見された。今日は棺当番だっただろうか……覚えていない。
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