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第709話(フレイン視点)
ユーベルはこちらに近付いてくると、階段上から見下ろしてきた。どこか呆れた顔をしていた。
「その様子だと、毒か何かにやられたんですか? ランキング三位の戦士も、毒には勝てないんですね」
「そう、みたいだね……ごほっ」
咳き込んだ途端、また夥しい量の血液が口から溢れ出した。口元を押さえた手からボタボタと血が滴り、白い階段に赤い痕が残る。
ユーベルはそれを見ても眉一つ動かさなかったが、こちらまで下りて来て肩を貸してくれた。彼の高級な衣装が血で汚れてしまったけれど、特に文句は言われなかった。
「まったく、本当に何をやらかしたのやら。とりあえずさっさと棺に入ってください」
「ああ……ありがとう……」
「……まあ、あなたがここまで無茶をするということは、余程大事な用だったんでしょうからね。ワケは回復したらじっくり聞かせてもらいますよ」
無言で頷き、血のついた唇で笑ってみせる。
ユーベルはさっさと階段を上り、フレインを一番近くの棺に放り込むと、蓋を持ちながら言った。
「一番回復の速いものを選びました。肉体の損傷も少ないですし、二、三時間くらいで全快するでしょう」
「ん……」
「では、さっさとおやすみなさい」
問答無用で蓋を閉めていくユーベル。おかげで棺の中は本当に真っ暗になった。自分が今どこにいるのかもわからなくなるほどだった。
――二、三時間か……。アクセルはどれくらいかかるかな……。
少なくとも、自分よりは時間がかかるだろうな……肉体も何も残っていないのだから……などと考えているうちに、思考もまとまらなくなってきた。
いつの間にやら意識もなくなっていたが、自分が眠っているのか死んでいるのかも判断できなかった。
***
どのくらい棺にいただろう。唐突に目を覚ましたフレインは、勢いよく棺の蓋を外した。
外に出たら、陽が傾いて空がオレンジ色に染まっていた。
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