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第710話(フレイン視点)

 ――アクセルはどうなったんだろう……。  ジークはちゃんとオーディンに欠片を渡してくれただろうか。オーディンはアクセルを蘇らせる手続きに入っただろうか。あとどのくらいでアクセルは復活するんだろう。気になる。  居ても立ってもいられず、フレインは館前の短い階段を駆け下りた。  とりあえずオーディンに面会して様子を窺おう……と思っていると、 「ぴー!」  遠くからうさぎの神獣が駆け寄ってきた。ピピだ。 「おっと、ピピちゃんか。心配かけてすまなかったね」 「ぴー、ぴー」 「ところで、私はこれからオーディン様にアクセルの様子を聞きに行ってくるけど、ピピちゃんはどうする? 留守番しているかい?」 「その必要はないぜ」  ピピの後ろから、唐突にジークが現れた。ミューやユーベルも一緒だ。ミューは何故か大きな棺を肩に担いでいる。 「オーディン様から棺を預かってきた。今はまだ蘇生の最中だが、時間になったらそこから弟くんが出て来るそうだ」 「じゃーん! これでーす!」  ミューが見せつけるように棺を掲げてくる。自分たちが普段使っている棺は真っ白の無地なのだが、こちらは黒地に豪華な彫刻が施されている。明らかに特別仕様だとわかるし、何より重そうだった。  よいしょ、とミューが一度棺を地面に下ろして、言った。 「で、これどこに運ぶ? フレインの家がいい?」 「あ、うん……。そうしてくれるとありがたいかな」 「やだな、ここから先は自分で運びなよ。大事な弟の棺でしょ。僕たち、もう随分手伝ったよねー」 「ええ、まったくです。あなたに手を貸したせいで、無駄にクリーニングが増えてしまいましたしね」  と、ユーベルが小言を言う。そう言えば棺に入る前、自分の血でユーベルの衣装を汚してしまったことを思い出す。  ジークも自分の肩を揉みながら言った。 「俺も、ただオーディン様に欠片を届けに行くだけかと思ってたのに、途中で変なヴァルキリーに絡まれちまってさ。危うく戦闘になるところだったぜ。戦闘アリなら、あらかじめ言っといてくれよ」

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