713 / 2296
第713話(フレイン視点)
図星だった。
表向きは平静を装っていたが、アクセルを忘れたまま長いこと生活していたことが、思った以上のショックだったのだ。絶対に忘れてはいけない人を忘れていたことが、自分自身許せなかったのだ。
だから、何としてでも自分の手で復活させたかった。
死にかけてでも無理をしたのはそのせいだし、他人にお願いしたくなかったのもそれが理由だ。自分一人で何とかしなければ意味がないと思った。
もちろん、オーディンへの面会や蘇生の魔法自体は自力ではどうにもならないけれど、それ以前の試練は全部自分で何とかしたかった。
そうでなければ兄として――大事な弟を想う者として、あまりに情けなかったから。
フレインは少し目を逸らして、答えた。
「……だとしても、それが何? そんなの、きみに非難される筋合いはないよ」
「そうは言うけどな、今までさんざんこっちを利用しておいて、今更『関係ない』って態度とられても困るんだよ。だいたい弟くんがいない間、お前さんを慰めてたのは誰だと思ってるんだ?」
「……それに関しては感謝してるし、悪いとも思ってるよ。でも私は、弟以外の人は考えられなくて」
「ああ、それでいいよ。俺だって、こんな自己中で病みがちな恋人なんていらないからな」
意外にもバッサリ切り捨ててくるジーク。
何が言いたいかわからなくて、フレインは困惑した目で彼を見た。
「一時的な慰めだったら大目に見てやる。利用するのだってかまわないさ。でも、今更他人面するのはやめろ。その辺の筋は通せ。礼をするとか、進捗を報告するとか、そういうことは最低でもできるはずだ」
「…………」
「ホントにお前さんは、弟くんがいないと一気に病んでだらしなくなる。もっとシャキッとしろよ。復活した弟くんに愛想尽かされるぞ」
そう言って、ジークは再び戸棚を漁り始めた。そして、奥に潜んでいた一升瓶を引っ張り出した。
ともだちにシェアしよう!

