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第714話(フレイン視点)

「お、これはケイジからもらった酒だな? ケイジの出身国でよく飲まれてたヤツだろ。これで酒盛りしようぜ」 「今から酒盛りするのかい?」 「いいだろ、どうせもう夕方だ。お前さん、適当にツマミ用意してくれ」 「……しょうがないな。本当に適当だから、文句言わないでね」 「何でもいいって。じゃ、俺たちは先に酒盛りしてるぜ」  と言って、酒瓶片手に立ち去って行くジーク。  彼がキッチンを出て行く間際、フレインは彼の背に声をかけた。 「ジーク」 「はん?」 「……ありがとう」  ジークは何も言わず、ひらひらと軽く手を振ってそのまま出て行った。  ――そうだよね、しっかりしなきゃ……。  これからアクセルをお迎えするのに、いつまでも不甲斐ない姿ではいられない。憧れのお兄ちゃんらしく、もっと泰然自若としていなければ。  フレインは戸棚を探り、余っていたチーズと枝豆を取り出した。  そして先程沸かしたお湯で枝豆を茹で、軽く塩を振って、チーズと一緒に皿に盛った。これで簡単なツマミにはなるだろう。  それを持ってリビングに戻ったら、三人は適当な場所に座ってマイペースに飲み進めていた。ミューなどは、ソファーに寝そべりながらペロペロキャンディーと酒を交互に味わっている。 「あ、おつまみが来たー」  フレインがテーブルに皿を置いた途端、ミューが跳ね起きてこちらに近寄ってきた。が、枝豆とチーズしかないのがわかると、やや不満げに口を尖らせる。 「あれ、しょっぱいものばかりだ。僕、お菓子がいいなー」 「お菓子はないんだよ。そのペロペロキャンディーで我慢してね」 「もー、しょうがないなー。どうせケイジにもらうなら、お酒と一緒にお饅頭ももらっちゃえばよかったのにー」 「まあよいではありませんか。日本酒のツマミとして、枝豆やチーズはよく合うと聞いていますし」  と、ユーベルが早速枝豆を口に放り込む。彼は仲間内でもかなり酒に強いと有名で、いくら飲んでも酔っているところを見たことがなかった。ユーベルに付き合って飲んでいたら、いつの間にか自分が潰れていた……という話も耳にしたことがある。

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