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第717話
「……!?」
突然背後から何かを落とした音が聞こえて、俺は勢いよく振り返った。
台所のドア付近に、金髪碧眼の男性が立っていた。目を丸くしてこちらを凝視している。あまりに綺麗な人だったから少しドキッとした。
彼がこの家の主なんだろうか。
「アクセル……!」
彼は買ってきた食材を放り出し、こちらに駆け寄って思いっきり抱き締めてきた。
「ああ、よかった……やっと起きてくれた……会いたかったよ、アクセル……」
「? ……???」
泣きそうな声で力強くハグしてくる男性。
いきなり熱烈な抱擁をされる羽目になり、俺は目を白黒させた。
ええと……この人は一体誰だろう。この反応からすると明らかに知り合いのようだけど、一体どういう関係だったんだろう。
今、この人は俺のことを「アクセル」と呼んだが、それが俺の名前なんだろうか。これだけ熱烈な歓迎を受けているのに、何も覚えていないことが申し訳ない……。
何も反応できず突っ立っていると、怪訝に思ったのか男性が顔を覗き込んできた。
「どうしたんだい? まだ本調子じゃないのかな」
「あ……えっと、その……げほげほ」
喋ったら咳き込んでしまって、俺は一度男性から離れた。
そう言えば、棺から出てから何も飲食していない。喉が渇いたし、お腹も空いている。
「ほら、お水飲んで。あと、腹ごしらえもしないとね」
男性がグラスに水を入れて差し出してくる。俺はそれを受け取って一気に飲み干した。
――あれ……?
ただの水かと思いきや、程よく甘酸っぱい味がついていた。渇いた身体に水分がぐんぐん沁み込んでいく心地がする。何となく飲んだ覚えがあるのだが、いつどこで飲んだかはっきりと思い出せない。
「……ありがとうございます」
そう礼を言って、俺は男性にグラスを返した。男性は少し首をかしげていたが、気にせず食事の準備をし始めた。
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