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第719話
俺はピピを撫でながら、聞いてみた。
「ピピちゃんはあの人と俺がどういう関係だったか、知ってるか? ただの友人ではないのは何となくわかるんだが……」
「きょうだい」
「え?」
「アクセルとフレイン、きょうだい。とってもなかよし。らぶらぶ」
「そ、そうだったのか……あの人と俺が兄弟……」
それにしては、顔つきや口調があまり似ていない気がするが……。
「しかし兄弟か……。そんなに仲がよかったなら、なおの事、何も覚えていないのが申し訳ないな……」
「ぴ……」
「共通する思い出もたくさんあっただろうに……何で俺は……」
全く身に覚えがないわけではない。靄 がかかったように記憶が霞 んでしまい、ハッキリしたことが何も見えないのだ。「何も覚えていない」というより、「何も思い出せない」と言った方が正しいか。
「う……」
ズキン、と頭に痛みが走って、俺はこめかみを押さえた。
何とか思い出そうと頭の中を探ろうとすると、途端にこうして痛みが走る。一生懸命思い出そうとすればするほど、痛みはひどくなっていく。まるで思い出させないようにしているみたいに、痛みが記憶を邪魔してくる。
これがまた、文字通り「頭痛のタネ」だった。
「ぴー……」
ピピが心配そうに顔を覗き込んでくる。
俺は笑いながら、答えた。
「ああ、大丈夫。ちょっと頭が痛むだけだから。思い出さないようにすれば痛くないし」
「ぴ……」
「それより、普段俺がどうやって過ごしていたか知りたいな。当然、仕事もしていたんだろう?」
そう尋ねたら、フレインがベランダから庭に出てきた。両手にかなり大きな鍋を抱え、ピピの前にドーンと置く。その中には、様々な野菜が丸ごと煮込まれたスープが入っていた。
「はい、ピピちゃんの好きな野菜スープだよ。あと、私たちのミルク粥もできたんだ。天気もいいし、せっかくだからここで一緒に食べよう」
「は、はい……」
「ちょっと待っててね。今お皿とスプーン持ってくるからね」
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