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第722話
はっきりとした自覚はないが、ひたすらクソ真面目だったことに関しては、身に覚えがないでもない。
何か思い出せそうな気がして眉根を寄せていると、皺の寄った眉間を親指で撫でられた。
「お前、頑張って思い出そうとしてる? 気持ちはわかるけど、頑張りすぎは禁物だよ。時間は永遠にあるんだから、焦る必要はないんだ。お兄ちゃんはまたお前と暮らせて、とっても幸せなんだから」
「でも、やはり忘れたままというのは申し訳なくて……」
「いいんだって。お前に無理される方が心配なんだよ。私に悪いから……とか、早く思い出さなくちゃ……とか、そういうことは一切考えなくていい。わかった?」
「…………」
「お返事は?」
「は……はい、兄上……」
ほぼ反射的に「兄上」と呼んでしまって、俺は少し動揺した。
フレインも目を丸くしてこちらを見てきた。
「お前、私のこと思い出したの?」
「あ、いえ……そういうわけではなく、何故か自然とそう呼んでて……」
「自然と……」
「返事をする時は『はい、兄上』と……。以前の俺は、そう言ってたんですか? 口癖みたいに当たり前に飛び出てきたので、自分でも驚きました」
「そっか」
フレインがにこりと微笑んできた。そしてポンと肩を叩き、こう言ってきた。
「その調子なら、記憶もすぐに取り戻せるよ。普通に生活していれば、昔の痕跡はいくらでも出て来るからね」
「はい……」
「さ、早く食器片づけよう。これが終わったら鍛錬しようね」
「鍛錬……ですか」
「うん、身体も訛ってるだろうし。少しずつでも調子を取り戻さないと、ランクも上がらないもんね」
「ランク……」
「というか、お前今ランクいくつなんだろう。今までいなかったからランク外だったりするのかな」
一度掲示板を確認しに行こうということになり、俺はフレインに連れられて世界樹の前まで来た。
そこには何人かの戦士がおり、それぞれ掲示板を眺めたり散歩したり別の世界へ渡ったりしていた。
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