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第723話

 ――ここも何となく来たことがあるような気が……。  俺がぼんやり周囲を眺めていると、フレインが掲示板の前で手招きしてきた。 「ほらアクセル、こっち来て。お前の名前、載ってるよ」  近づいて掲示板を見上げると、確かに俺の名前が載っていた。二〇〇〇人以上もの戦士の名前がズラーッと列挙されており、その一番下に「アクセル」と書かれている。 「んー、でも最下位かぁ。これまでのランクもキャンセルされちゃうなんて、残念だなぁ」 「以前の俺はもっと上だったんですか?」 「うん、少なくとも三十位以内には入ってたよ。詳しい数字は忘れちゃったけど」 「そうなんですか……」 「まあでも、お前のことだからすぐにランクは上がるんじゃないかな。ラグナロクを通して、戦士も半分以下に減っちゃったし、競争率も下がってるはずだよ」  お前なら大丈夫、とポンと肩を叩かれる。 「…………」  俺は自分の手を眺めた。  自分が戦っているところすら想像できない有様だが、武器を持てば感覚も思い出すのだろうか。わからない。  せめて身体は覚えているといいけど……と思っていると、フレインが途端に真面目な顔で忠告してきた。 「ああでも、変な男には気をつけるんだよ? ランクが低い人はいじめられることもあるからね。覚えがないからって、知らない人にはついていかないこと。わかった?」 「は、はい……」 「よし、じゃあ一度帰ろうか。家までランニングね」  そう言うやいなや、タタタ……と駆け出してしまうフレイン。 「えっ……!? ちょ、待ってください、フレインさん……!」  俺は慌てて彼を追いかけた。  二人で走っていたらあっと言う間に家に帰り着いたが、急に走ったので少し息切れしてしまった。一方のフレインは息一つ乱していない。 「うーん……やっぱりお前、かなり身体が訛ってるね。これは今日からでも少しずつトレーニングしていかないとダメかな」 「そ、そうですね……」

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