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第725話(フレイン視点)

 ――頑張り屋なのはいいことだけど、無茶はしないで欲しいなぁ……。  しばらくは注意して見守らなきゃ……と、フレインはベランダから庭に出た。  アクセルはピピと追いかけっこをしていたが、ピピの圧倒的速さに連戦連敗のようだった。ああやって遊びながら体力をつけていくのは、いい方法だと思う。 「疲れたら適宜休憩してね。ここにお水置いておくから、好きな時に飲んで」 「あ、はい……ありがとうございます」 「ところで明日なんだけど、私の死合い終わったら買い物行かない? お前の服、買いたいんだよね」 「服、ですか……。服なんて着られれば何でもいいんですけど……」 「だーめ。お前、放っておくといつも同じような格好しちゃうし。せっかく素材がいいんだから、もっとおしゃれしないとね」 「は、はあ……。でも俺、おしゃれに関しては全然わからないので……」 「私が選んであげるから大丈夫だって。というわけで、明日は一緒にショッピングね」 「はあ……わかりました」  渋々といった様子だったが、それでもアクセルは買い物を承諾してくれた。食材の買い出しはともかく、ファッションに関してはまるで興味がないらしい。ある意味、全然変わってなくて安心した。 「それより、明日死合いがあるって言ってましたが……俺が見に行くことは可能ですか?」 「もちろん。でも明日はずーっと格下の戦士が相手だから、あまり面白くないかもしれないよ? 見るまでもなく瞬殺で終わっちゃうかも」 「瞬殺ですか……。フレインさんは強いんですね」 「腕っぷしはね。……でも、脆いところもいっぱいあったりして」  自虐的に苦笑したら、アクセルはこんなことを言い出した。 「そうなんですか? 俺にはとても頼もしく見えますが……でも、脆いところのない人間なんていませんし、それが当たり前だと思いますよ」 「えっ……?」 「いいところとダメなところを併せ持っているのが人間ですもんね。フレインさんは強くて優しいですけど、そういう人ほどあまり弱さを見せないって言いますし。フレインさんにもきっと、人には言えない悩みがあるんだろうなと思います」 「…………」

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