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第726話(フレイン~アクセル視点)

「あっ……すみません! 生意気なことを言ってしまって……気を悪くしたなら謝ります。申し訳ありませんでした」 「いや、全然いいよ。むしろホッとした。やっぱりお前は昔のアクセルのままだ」  そう言ったら、アクセルは少し安心したように息を吐いた。  ――これからは、事あるごとにこういう会話をすることになるんだろうな……。  気にするなと言っても、弟は記憶がないことを気にしてしまう。彼はそういう人間だ。それは仕方がない。  ならば、そんなこと考える暇もないくらい充実した日々を送らせればいい。それだけで十分気は紛れる。  フレインはアクセルの腕を掴んで、言った。 「基礎体力はもちろんだけど、武器の感覚を思い出すのも大事だよ。お前の武器、ちゃんと保管してあるから取りに行こう」 「は、はい……」  アクセルを引っ張りつつ、庭の裏手に回って武器用の倉庫に向かった。 *** 「ここに全部の武器を保管してあるんだ」  フレインに案内された場所は、頑丈なレンガで作られた小さめの武器庫だった。  手軽に扱えるナイフや、獣を捌く時に使う肉斬り包丁もあったが、明らかに戦闘用の刃物もたくさん保管されていた。狩りに使う罠やロープ、弓矢も置いてある。  アクセルは試しに、近くにあった太刀を手に取った。ずっしりと重く、リーチも比較的長い。フレインが腰に携帯している武器とほぼ同じだ。  ――昔の俺は、これを武器として扱っていたのか……?  兄弟だというのなら、お揃いの武器を使っていてもおかしくない。  けれど触ってみてわかったのだが、この太刀はどうも自分に馴染まないような気がした。ちょっと重いというか……ぶんぶん振り回すにはリーチと重さが邪魔になる。  かと言って、短刀ではさすがに武器として心もとないし、飛び道具を使っていたとも思えない。一体自分は何を武器として扱っていたのだろう……。

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