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第728話

 そう思い直し、覚悟を決めて身を委ねようとしたのだが、 「……ごめん、やっぱりやめとこう」 「えっ……?」  パッと身体を離され、アクセルはきょとんとしてしまった。自分からそういう雰囲気を作っておいて、何故やめてしまうのか。 「フレインさん、どうして……」 「お前、昔の気持ちをまだ思い出してないでしょう。そんな状態でやったら、ただのレイプになっちゃうじゃない」 「それは……」 「こんな方法とらなくたって、思い出す術はいくらでもあるよ。鍛錬したり死合いに出たりすることも、立派な手段だと思うね」 「でも、俺は……」  身体に思い出させるのが一番手っ取り早いなら、抱かれるのもやぶさかではないと思っていた。フレイン相手だったら全然嫌じゃないし……彼がどんな風に自分を抱くのか、抱かれたらどうなってしまうのか、ちょっぴり興味もある。  アクセルは窺うように言った。 「フレインさん、どうしてもだめですか……?」 「えっ?」 「俺は、その……ここでやっても全然かまわないので……。フレインさん相手なら、レイプだなんて思いませんし……」  言ってて恥ずかしくなってきた。自分から「抱いてくれ」と頼むなんて、初めてのことではなかろうか。……いや、覚えてないけど。  直視できなくて俯いていたら、フレインがこちらに近寄ってきた。  また心臓をバクバクさせていると、そっと頬に触れられ、こんなことを言われる。 「私はね、お前とは相思相愛でありたいんだ」 「えっ……?」 「私はお前のこと愛してるけど、お前はまだそうじゃない。私と同じ意味で、私のことを想ってはいない」 「それは……それは単に記憶がないだけで、思い出せば必ず相思相愛に……」 「まあそうなんだけどね。でも私は、相思相愛じゃない状態でお前を抱くのは嫌だ。お前がよくても私が嫌なんだ。わかる?」 「フレインさん……」

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