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第730話
「うん、きっとね。だけどこればかりは運次第だからなぁ……。誰が誰と死合いを行うかは完全ランダムだから、こっちから死合いを申し込むことはできないんだ」
「そうですか……」
「とはいえ、私もまたお前と死合えるのを楽しみしてるんだ。ほぼ互角の状態で公式の死合いを行ったら、絶対楽しいと思うんだ」
ウキウキと顔を綻ばせるフレイン。「楽しみだ」という気持ちが全身から滲み出ていた。死合いがどんなものかハッキリ覚えていないが、戦士 にとっては最高の娯楽であることは間違いない。
「死合いのスケジュールって、どこで発表されるんでしたっけ?」
「ああ、世界樹 の掲示板だよ。一緒に見て来ればよかったね」
「後で見に行ってきます。真面目に死合いに出ていれば、記憶も戻ってくるかもしれませんし」
それなら、早いところ武器の感覚を思い出しておかなければならないだろう。いざ死合いになった時に、武器の振るい方を忘れていたら話にならない。
アクセルは庭の開けた場所で、二振りの小太刀を引き抜いた。そして軽く素振りをしてみた。
最初は両手で武器を振るうことに違和感を覚えたが、すぐ身体に馴染んできた。自分の腕の延長のように動かすことができ、武器同士がぶつかって喧嘩することもない。
これならすぐに感覚も取り戻せるかも……と思っていると、フレインが大量の丸太を荷台に乗せて運んできた。
「ねえアクセル、これ切ってみてよ」
「……え。なんですか、その丸太の山は」
「私が集めておいた木材だよ。暖炉用、燻製用、DIY用、木彫り用もあるんだ。そろそろ割らないといけないなと思ってたから、鍛錬のついでにスパスパやっちゃってくれる?」
「は、はあ……しかしこんなにたくさん……」
「休みながらでいいからさ。武器の切れ味も試しておきたいでしょ?」
「はあ、わかりまし……」
途端、フレインに大きめの丸太を投げつけられ、さすがに面食らった。
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