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第731話

「おわっ……!」  反射的に小太刀を振るい、目の前に迫ってきた丸太を叩き切る。  顔面にぶつかりそうだった丸太は、アクセルの目前で真っ二つに割れ、地面にポトッと落ちた。思った以上に切れ味がよく、スパッと切れたのでちょっと快感だった。 「おお、イイ感じ! じゃあ次行くよー!」 「ええ!? ちょっと待ってくださ……!」  再びフレインに丸太を投げつけられる。今度は二本同時に投げられて、両方の小太刀でそれぞれ叩き切る羽目になった。  一本なら全然イケるが、二本だと力と集中が分散してしまい、先程より偏った断面になってしまう。 「そう言えばお前、多対一の乱闘戦はあまり得意じゃないんだっけ? 戦う時は大抵一対一が多かったもんね」 「……そうみたいです。一気に襲ってこられると、どこを見ていいかわからなくなっちゃうんですよね」 「んー、まあ普通の死合いだったらそれでもいいけど、特別死合いの時は困っちゃうんじゃないかな。水上戦とか攻城戦とか、そういう模擬戦っぽいのもやることあるし」 「そ、そうなんですか……」 「まあそんなわけだから、お前もちょっとずつ多人数相手の戦闘に慣れていった方がいいかもね」 「はい……」 「ああでも、狂戦士(バーサーカー)になれば多人数相手でも怖くないかな。お前、やり方覚えてる?」 「あ、いえ……狂戦士(バーサーカー)が何なのかも正直……」 「そっか。じゃあ明日私の死合いを見て思い出すといいよ」  軽やかに笑いつつ、フレインはまた新たな丸太を投擲してきた。  その後何本か丸太を切って、アクセルは休憩に入った。フレインが作っておいてくれたはちみつ入りのレモン水を飲み、ホッと一息つく。  ――乱闘戦に狂戦士(バーサーカー)か……課題はたくさんありそうだ。  こんな未熟な状態で死合いに出るのは危ない気がするが、早く戦ってみたい気もする。  とりあえず自分の死合いがいつ行われるのか、確かめて来ないとな……と思い、アクセルはレモン水を飲み干した。

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