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第733話
さすがにこれはフレインにも聞けないしなぁ……と思っていると、
「お? あんた見ない顔だな。新人か?」
後ろから声をかけられ、アクセルは肩越しに振り返った。見覚えのない男が自分に話しかけていた。はて、誰だろう。
「俺はアンリっていうんだ。あんたは?」
「アクセルです……」
「ふーん? で、今のランクは?」
「まだ最下位で……」
「あー、そうなのか。それは大変なんじゃないか? よかったらうちに来いよ。あんたの顔とスタイルなら、上手くやれると思うぜ」
「……?」
何の話かさっぱりわからなかったが、断りきれずについて行くことになった。全く記憶がない分、なるべく人の話は聞いてみようと思ったのだ。思い出すきっかけになるかもしれない。
そういえば死合いのスケジュールを確認するの忘れたな……と考えていると、
「こっちだ」
とある建物の前まで連れてこられ、アクセルは面食らった。
――ええ……? 何だこの建物……。
何というか……随分煌びやかな施設である。壁はうっすらピンク色だし、装飾も金、銀、ガラス等のキラキラ系ばかり。戦うことが仕事の戦士が使う施設とは思えなかった。
というかこんな建物、全く覚えがない。ここまで印象的な建物なら、見た瞬間思い出しそうなのに……。
「じゃ、入る前にこれにサインしてくれ」
「はあ」
一枚の紙を渡され、アクセルは何の気なしに目を通した。そこには「公式娼館就労規約」とあった。
「えっ!?」
思わず目を剥いてしまう。
就労規約ってなんだ!? いつの間に俺はここで働くことになったんだ!? というか、ここってやっぱり公式娼館だったのか!?
――いやいやちょっと待て! こんなのにサインできるわけないだろ!
アクセルは焦って契約書を突き返した。
「結構です。俺はこういうので困ってないので」
「隠さなくていいって。ここには似たような境遇のヤツしかいないからな。あんたも、上位ランカーのセクハラに困ってたんだろ? わかるよ」
「いや、俺は本当に……」
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