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第736話
以前にも全く同じことを言われたような気がして、アクセルはハッとした。
――もっと自分を大事にしなさい。お前のためじゃなく、私のために。
これを言われたのも、男たちに襲われかけてフレインに助けられた時だった。確かフレインを捜しに出掛けて、男たちの言葉に騙されて変な建物に連れ込まれたのだ。そこで頭を殴られて、動けなくなったところを押し倒されて……。
「フレインさん、ちょっと思い出しました」
「え? 何を?」
「以前にもあなたに同じことを言われたなって。しかも似たようなシチュエーションで……」
「…………」
「というか俺、全然学習能力ないですね。同じことばかり繰り返してる……。何だか自分が嫌になります」
記憶がなくても同じことを繰り返すということは、無意識にそういう行動をとっているということだ。考える余地がまるでないということだ。
この分じゃ、例え記憶を取り戻しても同じ過ちを繰り返しそうである。
――どうせ復活するのなら、もっと危機意識のある優秀な人物に生まれ変わりたかったな……。
そんなことを考えていると、フレインは首をかしげて言った。
「お前、またネガティブなこと考えてない? どうせならもっとしっかりした人に生まれ変わりたかった、とか」
「えっ!? 何でわかるんですか!?」
「わかるよ、私はお前のお兄ちゃんだからね。それにお前は素直で嘘つけない子だから、考えていることが全部顔に書いてあるんだ」
「う……」
……それはそれで何だか恥ずかしいのだが。
視線を落としていると、フレインに優しく頭を撫でられた。
「いろいろ言ったけど、長所と短所は紙一重だからね。お前の優しさにつけ込んでくる輩もいれば、それに助けられる人もいる。危機意識はもっと持って欲しいけど、どうしてもだめな時は私ができる限りフォローするからさ。だからあまり思い詰めないで。お前が暗い顔をしてると私まで悲しくなっちゃう」
「……はい……」
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