745 / 2296

第745話

 だからせめて、自分だけはフレインの側にいたいと思う。誰がいなくなっても、自分だけは最後まで一緒に……。 「ぴー」  隣にいたピピが身体をすり寄せてきて、アクセルはふわふわの毛並みを撫でた。 「そうだな、ピピも一緒だよな。わかってるよ、ありがとう」 「ぴー♪」 「じゃ、もう少しランニングするか。そしたらフレインさんのところに戻って、ご飯の準備してくるからな」  そう言って、再びピピと走り込みを始める。自分は体力が落ちているから、単純な走り込みをより多くやっていかなければならない。基礎体力をつけるにはランニングが一番だ。  そうしてまた何周か庭を走ったところで、鍛錬を切り上げることにした。  家に戻って水分補給をし、軽く汗を流して服を着替える。自分たちの朝食と一緒にピピの食事も用意し、腹ごしらえして出掛けることになった。  死合いが行われるスタジアムに向かう途中、フレインは笑顔で話しかけてきた。 「死合いが終わったら一緒に買い物だからね。服買って、食料買って、他にも必要なものをいっぱい買わなきゃ。ふふ、楽しみだなぁ」 「そうですね。でも俺は、フレインさんの死合いも楽しみですよ」 「死合いはあまり期待しないで欲しいなぁ。相手がそれほど強くない場合は瞬殺になっちゃうかもだし」 「瞬殺だとしても、俺にとっては勉強になりますよ」  そんなことを話しているうちに、スタジアムの前に来た。  アクセルは微笑みながら、敬愛する相手に言った。 「俺は一番前の席であなたを見ています。フレインさん、どうかご武運を」 「ありがとう。適当に頑張るよ」  ひらひらと手を振りつつ、フレインはスタジアムの裏口から中に入っていった。  アクセルは観客なので、正面ゲートから客席に入った。宣言通り、一番前の見やすい席を確保する。 「あーっ! アクセルじゃん! 久しぶりだなー!」 「えっ……?」  唐突に声をかけられ、右隣にドーンと腰を下ろされる。それは赤い髪の少年だった。何となく懐かしい気がする。記憶を失くす前は仲良しだったのかもしれない。

ともだちにシェアしよう!