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第745話
だからせめて、自分だけはフレインの側にいたいと思う。誰がいなくなっても、自分だけは最後まで一緒に……。
「ぴー」
隣にいたピピが身体をすり寄せてきて、アクセルはふわふわの毛並みを撫でた。
「そうだな、ピピも一緒だよな。わかってるよ、ありがとう」
「ぴー♪」
「じゃ、もう少しランニングするか。そしたらフレインさんのところに戻って、ご飯の準備してくるからな」
そう言って、再びピピと走り込みを始める。自分は体力が落ちているから、単純な走り込みをより多くやっていかなければならない。基礎体力をつけるにはランニングが一番だ。
そうしてまた何周か庭を走ったところで、鍛錬を切り上げることにした。
家に戻って水分補給をし、軽く汗を流して服を着替える。自分たちの朝食と一緒にピピの食事も用意し、腹ごしらえして出掛けることになった。
死合いが行われるスタジアムに向かう途中、フレインは笑顔で話しかけてきた。
「死合いが終わったら一緒に買い物だからね。服買って、食料買って、他にも必要なものをいっぱい買わなきゃ。ふふ、楽しみだなぁ」
「そうですね。でも俺は、フレインさんの死合いも楽しみですよ」
「死合いはあまり期待しないで欲しいなぁ。相手がそれほど強くない場合は瞬殺になっちゃうかもだし」
「瞬殺だとしても、俺にとっては勉強になりますよ」
そんなことを話しているうちに、スタジアムの前に来た。
アクセルは微笑みながら、敬愛する相手に言った。
「俺は一番前の席であなたを見ています。フレインさん、どうかご武運を」
「ありがとう。適当に頑張るよ」
ひらひらと手を振りつつ、フレインはスタジアムの裏口から中に入っていった。
アクセルは観客なので、正面ゲートから客席に入った。宣言通り、一番前の見やすい席を確保する。
「あーっ! アクセルじゃん! 久しぶりだなー!」
「えっ……?」
唐突に声をかけられ、右隣にドーンと腰を下ろされる。それは赤い髪の少年だった。何となく懐かしい気がする。記憶を失くす前は仲良しだったのかもしれない。
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