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第746話
彼は明るい口調でこちらに話しかけてきた。
「なー、元気してた? フレイン様とは相変わらずラブラブなの?」
「あ……ええと……」
「ま、死合いの観戦に来たってことは仲良しなんだろうな。仲良しすぎてヤキモチ焼いちゃうよ」
「は、はあ……」
「どうせこの後もどこかデート行くんでしょ? 羨ましいなー。アクセル、たまにはオレともデートしてよ」
「え……それは、ええと……」
一方的にいろんなことを言われ、アクセルは完全に困惑してしまった。どう答えていいかわからなかったし、そもそも彼の名前すら覚えていない。以前の自分とどういう関係だったかも思い出せないのだ。下手な返事をしたら失礼だし、トラブルに発展する原因にもなる。
ここは正直に覚えていないことを言った方がいいのだろうか。それとも……。
「……なんてね。オレのこと、覚えてないんだろ?」
「えっ……?」
「それくらい知ってるって。オレ、耳は早い方だからさ。オレだけじゃなく全部の記憶がないんだろ? フレイン様のことすら覚えてないって聞いたよ」
「……はい、そうなんです」
「よせよ、敬語なんて。オレたち、元は同期だったんだからさ。もっとフランクにいこうぜ」
「あ、うん……そう、なんだ……」
「ちなみに、オレはチェイニーな。もう忘れないでくれよ?」
「ああ、わかった……ごめん、ありがとう」
そう言ったら、チェイニーは満足げに笑った。
そうしてしばらく他愛のない話を続けていたら、唐突にチェイニーがこんなことを言い出した。
「しかし、記憶がなくてもラブラブな兄弟って妬けちゃうなぁ」
「え?」
「なーんにも覚えてなくても自然と惹かれ合っちゃうってことだもんね。羨ましいぜ」
「それは……」
「ああほら、フレイン様の死合いが始まるよ」
会場が一段と盛り上がり、フレインとその相手の戦士が入場してきた。
――チェイニー……本当に俺のこと、好きでいてくれたのかな……。
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