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第750話

「毒!? そんなのルール違反でしょう!」 「いや……以前とはだいぶルールも改定されたから、違反にはならなくなったんだ……。飛び道具もOKになったし、何なら魔法だって……おえっ」 「あああ! もう喋らなくていいです! とにかく早く毒を抜きましょう! すぐ棺に入れてあげますから!」  アクセルはフレインを背負い、急いで棺のあるオーディンの館に向かった。場所は覚えていないはずなのに、一切迷うことがなかった。 「チェイニー! チェイニー、いるか!?」  館に入り、大量の棺が安置されている場所でアクセルは叫んだ。この後棺当番……と言っていたので、絶対いると思った。 「あれ? どうしたんだよ、アクセル。フレイン様と棺デートするのか?」 「その前に、フレインさんの毒を抜いてくれ。毒抜き用の棺、あるよな?」 「あるけど、あれは……」 「じゃあそこに案内してくれ。早く毒を抜かないといけないんだ」  チェイニーが連れて行ってくれたのは、館の一番奥にある小部屋だった。毒抜き用の棺が大小複数安置されており、その全てが空いている。蘇生用の棺と比べて毒抜き用の棺はほどんど使われないため、埃を被っているものもあった。 「ああ、やっぱりな。全然使われてないから掃除もロクにされてないと思ったんだ」  と、他人事のように言うチェイニー。  ――いや、棺当番だったら棺の掃除くらいやっとけよ……。  自分が当番だったら、全ての棺を丁寧に掃除するのに……などと考えつつ、アクセルは言った。 「チェイニー、雑巾とバケツを持ってきてくれ。簡単に掃除する」 「え、今から?」 「こんな汚れた棺に兄上を入れるわけにはいかないだろ。時間がないから急いでくれ」 「わかったよ」  チェイニーはすぐにどこかへすっ飛んでいき、雑巾数枚と水の入ったバケツを持ってきてくれた。  アクセルは雑巾を固く絞り、棺の中や縁を特に重点的に掃除した。

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