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第752話

 そうして一人トレーニングを続けていると、 「お? 見ない顔がいるじゃねぇか」  数名の戦士が棺部屋になだれ込んできた。弓矢等の武器を携帯したまま、仲間の一人を棺に突っ込んでいる。どうやら狩りの最中に毒を受けたか何かしたらしい。  ヴァルハラでの狩りはそれなりに危険なんだな……と思っていると、そのうちの一人が話しかけてきた。 「お前、最近入ってきた新人だよな? 何でもフレイン様の弟だとか」 「はい……そうですけど」 「で? 今日はフレイン様は側にいないのか? いつも一緒にいるじゃねぇか」 「いますよ。そこで毒抜き中です」  と、閉じている棺を指し示す。棺は静かなもので、うんともすんとも言わなかった。きっと毒を抜きながら眠っているのだろう。 「そうか、ならちょうどいいな」  男たちがニヤリとほくそ笑む。  嫌な予感がする……と思い、腰を上げかけた時、背後に回り込んでいた男に羽交い絞めにされた。 「なっ……!? 何するんですか!?」 「ちょっとくらいいいだろ? 別に減るもんじゃないんだしよ。俺たち、狩りの直後で溜まってんだ。下っ端なら少しは発散させろや」 「安心しろって。お前も気持ちよくしてやるからよ。大人しくしてれば乱暴はしねぇぜ」  勝手な理屈をこね、こちらに近づいてくる男たち。  身の危険を感じたが、それ以上に腹立たしかった。自分よりもランクが下なら何をしてもいいという考え方に、吐き気を覚えた。  こんなヤツらが自分より上位の戦士(エインヘリヤル)だなんて、どうかしている。 「この……ふざけるな!」 「うわっ!」  アクセルは爆発的な力を発揮し、羽交い絞めにしていた男を思いっきり投げ飛ばした。  まさか下位ランカーに投げ飛ばされるとは思わなかったらしく、男たちは一様に目を丸くしていた。  が、すぐにこちらを睨みつけると、おもむろに武器を構え始める。

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