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第755話
「あの程度だったら、斬ることも可能だったと思うんですが……でも、目覚めた時に自分の周りが血みどろなのはちょっと嫌かなと。掃除も大変ですし、昏倒させられるならそっちの方がいいかと思ったんです」
「アクセル……」
「余計なお世話だったらすみません。ただの自己満足なので、以後は気をつけます」
「…………」
「それよりフレインさん、買い物から帰ったらまた鍛錬に付き合ってくれませんか? 俺はもっと強くなりたいんです」
フレインの死合いを見たのも理由のひとつだが、たった今上位ランカーに襲われかけたことも大きい。
ランクが低いというだけで、襲ってくるヤツは必ずいるのだ。いくら公式娼館が存在していても、それを利用せずにタダで楽しもうとしてくるヤツはいるのだ。
今日はたまたま撃退できたが、これがもっと強いヤツになったら手に負えなかったかもしれない。それを防ぐには、自分がもっと強くなるしかない。
そう言ったら、フレインはこちらに寄ってきて「いい子いい子」と頭を撫でてくれた。
「もちろん付き合うよ。可愛い弟が強くなれば、私も鼻が高いもんね」
「ありがとうございます。フレインさんに恥をかかせないよう努力します」
「うんうん。それと、気遣ってくれてありがとうね。返り血を浴びるのはあまり気にしないけど、血まみれになってる服はさすがに着たくないし。お前のおかげで綺麗な服を着られたよ」
「いえ、そんな……。今度はもっと上手く立ち回れるように頑張ります」
そんな会話を交わしつつ、二人でオーディンの館を出た。
毒抜きのせいでだいぶ時間をロスしてしまったが、それでも目的の買い物はできた。
「あ、これいいな! こっちも似合うよ! おおお、イイ感じ~!」
衣装を扱っている市場に着くなり、フレインは服をとっかえひっかえし始めた。
「ふふ、素材がいい子は何を着ても似合うね~。ねえ、今度はこれ着てみない? 私とお揃いだよ!」
「もう何でもいいです……」
……これは下手な鍛錬よりずっと疲れるかもしれない。
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