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第757話
そして二日後。アクセルの死合いの日が近づいてきた。
「調子はどうだい?」
いつもより早起きして庭を走っていたアクセルに、フレインが声をかけてきた。フレインも今日はちょっとだけ早起きをしている。応援してくれていると思うと嬉しい。
「悪くないです。狂戦士 の感覚はまだ思い出せないですけど」
上位ランカーなら必ず身に付けているという狂戦士モード。
以前の自分もできたらしいから、死合い前になんとか思い出そうと鍛錬しまくったのだ。フレインにお願いして何度も稽古をつけてもらったし(その代わり買い物にも連れ回されたけど)、洞窟踏破にも挑戦しようとした。
が、結局時間が足りなくて狂戦士モードは思い出せなかった。
――念のために、思い出しておきたかったんだけどな……。
今日の相手は、ランキング九七六位の戦士だ。確か名前はディーン。二〇〇〇人中九七六位ならだいたい真ん中くらいの強さだが、最下位の自分からするとかなりの強者と言える。
フレインは「そのくらいの相手なら全然たいしたことないよ」と言っていたが、ランキング三位のフレインと最下位の自分と一緒にしないで欲しい。
アクセルは汗を拭いながら、言った。
「俺は早くランクを上げたいんです。セクハラ予防っていうのもありますけど、フレインさんと公式死合いを行いたくて」
「ああ、なるほどね。それは私も同じだな」
「だから今回の死合いでは絶対に負けたくないんです。負けたらランクも上がりませんし」
下位ランカーがランクを上げるには、自分よりも上位の戦士と戦って勝つしかない。そこで勝てば、対戦相手よりひとつ上のランクに食い込める。つまりアクセルの場合、ディーンに勝ったらその時点で九七五位は確定というわけだ。
ちなみに負けてしまった場合ランクは変動しないので、最下位は最下位のまま上のセクハラを受け続けることになる。
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