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第761話
衣装がわずかに破れたかと思ったら、今度は拳で顔面を狙われ、ギリギリで首を捻ったものの避けきれずに頬を殴られた。
とにかくもう一度距離をとるべく、地面を蹴って間合いの外に出たが、ディーンはすぐさま距離を詰めて来てひたすらこちらを攻め立ててくる。
――体勢を整える隙も与えないつもりか……。
それなら、こちらもどうにか反撃の糸口を掴まなくては。このままでは本当に嬲り殺しにされてしまう。
アクセルは間合いに踏み込んできたディーンに向かい、思い切って小太刀を振るった。ほとんど勘だけで手斧を弾き、拳をかいくぐって左手の小太刀で相手を斬る。非常に浅かったが、肉を切った手応えはあった。
「うおっ!?」
まさか反撃されると思っていなかったのか、ディーンは慌てて間合いから抜け出した。
鉄や土や汗などの戦いの匂いに混じって、わずかに血の匂いが漂ってくる。かすり傷程度だが、ちゃんと斬れていたみたいでよかった。
「てめぇ……何なんだよ! 最下位の最弱ランカーのくせに、何で攻撃が見えるんだよ!」
「……!」
「さっさと俺に殺されろ!」
そう言って、再びこちらに向かってくるディーン。雄叫びから足音、血の匂いから殺気に至るまで、どこに彼がいるのか丸わかりだった。視覚がなくても、その他の感覚で十分感知できる。
――せっかく相手の目を潰したんだから、自分の位置を教えるような真似をしたらアウトだろ……。
アクセルはディーンの気配を頼りに、素早く小太刀を振り抜いた。左手の小太刀は手斧に止められてしまったが、右手の小太刀は手斧をすり抜け、ディーンの腕に命中する。ズバッと小気味いい音がして、ディーンの片腕が飛んでいくのがわかった。
――よし、だんだん調子が出てきた……!
目潰しという不覚はとったが、視覚を奪われても十分戦える。粉を浴びた瞬間は一巻の終わりだと思ったけれど、何故か自然と身体が動いている。
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