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第763話
弾力のある肉の手応えを感じ、一瞬ゴリッと硬い部分にぶつかった後、再びスパッと肉が切れる。
それと同時に生温かい返り血を真正面から浴びてしまい、自分の全身に血の臭いがこびりついた。
ちょっと不快だったものの、これだけ血を浴びたのなら、相手は戦闘不能になったはず……。
『勝者・アクセル。遺体回収班は遺体を回収してください』
空からヴァルキリーの声が降ってきた。
それでようやくアクセルは、自分の勝利を確信できた。
「う……」
会場がざわめくのと同時に、ふっと集中力が切れてしまった。
忘れていた目の痛さと全身の倦怠感、強烈な血の臭いが鼻について、さすがに気持ち悪くなってくる。早く帰りたい。
――まだ目は開けられないか……。
しかし、会場全体がどよめいているのもあり、聴覚が頼りにならない。遺体回収班がバタバタと走り回っている音は聞こえるが、彼らがどこからやってきたのか、どこから退場していくかはよくわからなかった。
どうせ遺体回収班が出てきたのなら、誰かエスコートしてくれればいいのに……。
仕方なく「こっちかな」と思う方に歩き、手探りで壁を探していたら、ようやく見つけた壁にゴン、と頭をぶつけてしまった。
地味に痛くて額を押さえていると、
「こっちだよ」
と、優しく腕を引かれて会場外に案内された。この声と手の感触からして、見えなくてもすぐにわかった。
「フレインさん?」
「そうだよ。誰も手を貸してくれないとか、不親切だよねぇ? 後で遺体回収班にクレーム出しとこう」
冗談めかして笑い、フレインはそのままスタジアムの外に連れ出してくれた。
「これから泉につれてってあげるね。さっさとその汚い血を落とそう」
「あ、すみません……。俺に触ると汚れちゃいますから、数歩前を歩いてくれるだけで大丈夫なので」
「何言ってるの。そんなところで遠慮しなくていいんだよ。それよりお前、目潰し受けたのによく頑張ったね。お兄ちゃんは誇らしいよ」
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