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第768話

 とりあえず弓矢を携帯し、フレインに従って山に入る。  狩りの定番である山は、初心者向け・慣れている人向け・ベテラン向けといろんなコースがあったが、今日は様子見として初心者向けのコースにしてもらった。 「わあ……」  初心者向けのコースは、本当にハイキングコースみたいな作りになっており、道もある程度整備されていて歩きやすかった。周囲には様々な樹木が生えており、少し奥に入ると赤や黄色に色付いた秋の葉が見えてくる。  目にも鮮やかな光景で、単に散策しているだけで楽しかった。 「本当に紅葉(もみじ)が咲いていますね」 「綺麗でしょ? 今はちょうど紅葉(こうよう)シーズンなんだ」 「これが本当の紅葉狩りですね。鹿はともかく、これだけでも山に入った価値があります」 「そうかい? 私は、せっかくなら鹿肉も持って帰りたいけどね」  ニヤリと笑うフレインにつられて、アクセルも笑った。  ――こうして兄上と紅葉を見るの、ずっと憧れていた気がする。  季節になったら紅葉や桜を見に行こうと、そういう約束はしていたと思う。が、果たされた記憶はない。  まだ全てのことを思い出したわけではないけど、以前は本当にランクを上げるのに必死で、娯楽は二の次になっていた気がする。  いや、もちろんランクを上げるのは最優先事項なのだが、もうラグナロクも終わってしまったし、たまにはこうしてフレインと娯楽に没頭するのもいいかもしれない。 「そう言えば、視覚に頼らない戦い方を教えてくれたのって、兄上ですか?」  歩きながらアクセルは、死合い中に思い出した感覚をフレインに話した。 「以前、黒い布を目元に巻いて、素手で殴り合うような鍛錬をしたことがあるんです。そのおかげで、目潰しを食らっても身体を動かすことができました。もっとも俺は鍛錬をつけてもらう側だったので、いつもボコボコにされてましたけど」 「へえ、そうなんだ? そんな鍛錬してたのは初耳だなぁ」 「え、兄上じゃないんですか? じゃあ誰に鍛錬してもらったんだろう……」

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