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第771話

「あ、あの……今の俺は、その……寝ている間、どんな感じですか……?」 「どうって……すごくよく寝ているよ。お前は一度寝ると朝まで起きないし」 「……やっぱり……」 「ああでも大丈夫、変なことはしてないから。たまに悪戯したくなるけど、それやっちゃったらレイプと同じだもんね」  悪戯はされていないのか。それを聞いてちょっと安心した。  だけど、フレインが未だに手を出してくれないことに関しては少々気になっている。 「悪戯は勘弁ですけど、真面目にやるなら俺はいつでも構いませんが」 「ええ? 何? お前、そんなに私に抱かれたいの?」 「それは……」 「そんなに焦らなくてもいいんだって。ここはヴァルハラだから、時間は無限にある。全ての記憶が戻ってから、ゆっくり抱き合えばいいじゃない。その方が楽しいし、快感も増すと思うよ」 「でも……」 「日常生活送ったり、死合いに出たりすればいろいろ思い出してくるからさ。そしたらたっぷり可愛がってあげるよ。ね?」  こちらをいなすように頭を撫でてくるフレイン。  何だかまるで相手にされていないみたいで、じわじわと腹が立ってきた。こちらは同意の意思表示をしているのに、何故フレインは頑なに認めてくれないんだろう。 「それ、要するに拒否ですよね?」 「えっ?」 「俺は本当に兄上のことが好きなのに、兄上は俺を拒否するんですね」  そう言ったら、フレインは初めて驚愕して目を丸くした。 「いやいや、違うよ。拒否なんかじゃなくて、私はただ……」 「でも、俺には拒否しているように聞こえるんです。現に、いくら俺が『好きだ』って言っても『それは本当の気持ちじゃない』って言って信じてくれないじゃないですか」 「いや、だからね……」 「そこまで拒否されると『やっぱり以前の俺の方がいいのかな』って……。今の俺を否定されているみたいに思えてきて……」 「え……」 「さすがにちょっと、落ち込みます……」  そう言って視線を落としたら、フレインはかなり慌てて言い繕ってきた。

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