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第793話

 兄ほど美貌に優れているのなら、男ばかりのヴァルハラでは非常に目立つに違いないし、タチの悪い上位ランカーに目をつけられてもおかしくない。  今は戦士ランキング三位だから変なことをしてくるヤツはいないけれど、それ以前は言うのも憚られるような被害を受けることも多かったのだろう。 「まあでも、襲ってくる連中に限ってたいしたことなかったりするから、そういうヤツらは返り討ちにしてやったり……って、どうしたのアクセル?」 「……なんか理不尽すぎる。何故兄上ばかりそんなひどい目に……」 「やだな、そんな深刻に考えないでよ。そりゃあ最初の頃は何度か理不尽な目に遭ったりもしたけど、強くなるのも早かったから嫌がらせなんてすぐになくなったよ? 今じゃ逆に恐れられているくらいだし。だから何も気にしなくて大丈夫」 「……でも、兄上が嫌な目に遭ったのは事実だろう?」 「そんなの、十年くらい昔の話だよ。お前がヴァルハラに来る前の話だからもう時効さ。今はあの頃と違って、治安もだいぶよくなったしね」 「そうか……」  確かに今の状況なら、兄に手を出そうなどという愚か者はどこにもいないと思う。  少し安心していると、兄は釘を差すように言った。 「というか、むしろお前の方が気をつけなきゃ駄目だよ。実力はあるとはいえ、お前はまだ下位ランカーの部類に入るんだから。顔もイケメンで目立ってるし、そういう人はいじめの対象になりやすい。知らない男にホイホイついて行かないようにね」 「行かないって、子供じゃないんだから」 「そう言いながら、この間は娼館前までついて行っちゃったでしょ」 「う……」  ……それを言われると、自分でも恥ずかしくて顔を俯けてしまう。 「私もエスパーじゃないんだ。いつもタイミングよく助けてあげられるわけじゃない。お前自身が気をつけないとどうしようもないことだってある。その辺、ちゃんとわかってるのかな?」 「わ、わかってます……」

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