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第794話

「ならいいけど」  疑いのまなざしを向けつつ、兄は続けた。 「とにかく、私を心配させるようなことはしないでよ? 私自身は平気だけど、お前がひどい目に遭うのは本当に耐えられないんだ。お前が知らないヤツらに何かされるなんて、想像しただけで吐き気がする」 「兄上……」 「お前を抱いていいのは私だけ。斬っていいのも私だけ。例外なのは死合いのみ。それ以外は断じて許さない。もしお前に手を出すヤツがいたら、修復不可能になるまでバラバラに斬り刻んでやるから」 「そ、そうか……」  ……この兄を本気で怒らせたら、ヴァルハラであっても命はないな、と思った。  アクセルは引き攣った顔を何とか元に戻して、答えた。 「わかったよ、兄上。なるべくあなたに心配かけないよう、気をつける。俺だって、あなた以外の人に何かされるのは嫌だしな」 「うん、それでいいよ。……ところで、今日は何をしようか。ピピちゃんの山に行くのもいいけど、他の雑用も片付けたいよね」 「山に行くのは明日以降でいいんじゃないか? そんなに急ぎでもないし……それより、今日はきちんと鍛錬したい。次の死合いに向けて、狂戦士モードを思い出しておきたいんだ」  この間976位のディーンに勝利したので、アクセルのランクは975位で確定である。こうしてランクが上がっていくにつれて、死合い相手もどんどん手強くなるので、今の実力のままではいずれ太刀打ちできなくなるだろう。  次の相手が誰かは知らないが、狂戦士モードを身に付けておいて損はない。以前の自分は何となくできていたというし。  二人で朝食を平らげ、食器を洗って片付けている時、兄が言った。 「狂戦士モードを思い出すだけだったら、例の洞窟を踏破してくるのが一番確実だと思うけど……お前、洞窟踏破のことは覚えてる?」 「あー……っと、なんか幻聴が聞こえてきたことは覚えてるな。そしてやたらと喉が渇いて眠かった」

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