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第795話

「はは、そういう思い出だったらまた踏破してきても大丈夫だね。今から準備して行ってくる?」 「でも洞窟踏破って、ものすごく時間かかるんじゃなかったか?」 「普通だったら丸一日はかかるね」 「だよな……。他にもやりたいことあるし、そんなに時間はかけられない。鍛錬している最中に思い出したりしないかな」 「んー……だったら、上位ランカー同士の『楽しい鍛錬』に参加するのがいいかも」 「……楽しい鍛錬?」  それは初耳だ。「楽しい」などと言っているが、どこか危険な匂いを感じるのは気のせいだろうか……。 「覚えてる? 以前上位ランカーに混じって狂戦士モードの鍛錬したこと」 「ええと……覚えているような、覚えてないような……」 「お前がヴァルハラに来て数ヶ月経った頃のことだよ。ミューやジーク、あと私に混じってちょっとだけ特別な鍛錬をしたんだけどね。結局鍛錬は途中で中止になっちゃったけど、きっかけくらいは掴めたんじゃないかな」 「……!」  言われて、鳩尾の辺りから悪寒がすぅっと上ってきた。  霞がかかったような記憶だが、それでも濃厚な血の匂いは覚えている。  誰かが棺に入る羽目になったはずだが、それが誰で、誰に怪我を負わされたのか……思い出せそうで思い出せない。  ――いや、違うな……思い出すのが怖いんだ……。  自分の本能が思い出すことを拒否している。思い出してはいけないと警告している。  アクセルは頭を振って、何度か目をパチパチしばたたかせた。 「どうしたの? なんか顔色悪くない?」 「……いや、大丈夫だ。その鍛錬に関してはあまり思い出しちゃいけない気がした」 「……。そっか。まあ、中には思い出したくないこともあるよね」 「でも、狂戦士モードの感覚は思い出したいからな……。何か他にいい方法ないだろうか……」  そう頭を悩ませていると、兄は少し首を傾けた。そしてこう言った。

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