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第799話

 ――こ、こんなスピードじゃ、あっという間に息が上がって……!  それでも「一緒に鍛錬したい」と言った手前、途中でへばるわけにはいかない。ケイジにも失礼だ。  そう思い、アクセルは必死に足を動かした。  住宅街を抜け、市場を通り過ぎ、スタジアムや宴会場からも遠ざかっても、ケイジは黙々と走っていた。かなりのスピードが出ているはずなのに、息もほとんど乱れていない。さすがに上位ランカーは、スタミナも桁違いである。  というか、一体どうやってここまでのスタミナを維持しているんだ? ケイジはともかく、兄は自分とも体格が変わらない。兄をずっと見ていても、特別な訓練をしているようには見えなかった。  何だろう……何が違う? 俺がやっているいつもの鍛錬と、何がどう違うのだ……?  チラチラとケイジを見ながら走っていたら、唐突にケイジが立ち止まった。危うくぶつかりそうになって、アクセルも慌てて足を止めた。 「ここが修行場その一だ」 「は……」  そこは、山付近の少し開けた場所だった。  太くて重そうな丸太、身の丈ほどもある岩がたくさんあり、山の奥から川も流れて来ている。その川は滝修行ができるような作りになっており、かなり高いところから大量の水が落ちて来ていた。ドドド……と気後れしそうな音がする。  なるほど、ここがケイジのいう修行場なのか。「その一」ということは、他にもいくつか修行場を持っているらしい。  ケイジは言った。 「これより三〇分ほど滝に打たれ、その後丸太を担ぎながらここを三周し、最後に岩を押して次の修行場に向かう。ここでの鍛錬は以上だ」 「は、はあ……」  聞いているだけなら非常にシンプルなのだが、それを実行するとなると結構大変なのではないかと思う。ここにある丸太、全部太くて重そうなものばかりだし、岩も大きいものしかないし……。

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