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第801話

 ――どうもこうも、少しずつ水に慣れるしかないだろ……。  水に慣れていくことで、何かこう……今までとは違う強さが手に入るに違いない。これでも訓練なんだし。  アクセルは気合いを入れ直し、思い切って腰まで水に浸かった。 「うっ……」  途端、下半身が凍り付き、上半身にぶわっと鳥肌がたつ。内臓が冷たさに悲鳴を上げ、中で暴れ回っているかのようだった。悪寒は当然だが、うっすらと吐き気すら催してくる。  ――ヤバいってこれ……! ホントに凍死しそう……!  一刻も早く陸に上がりたかったが、水に濡れた状態で上がったら、気化熱でますます体温が低下してしまう。上がるに上がれず、アクセルはその場でガタガタ震えながら寒さに耐えるしかなかった。奥歯がカチカチいって止まらない。  ――滝に打たれなくても、水に入ってるだけで何かの修行になりそうだな……。  もう一度ケイジに目をやったが、彼は相変わらず淡々と滝に打たれ続けている。何分経ったのか知らないが、こんな過酷な修行を「基礎訓練」などと言えてしまうところからして、自分とはまるで格が違うなと思った。  でも、この基礎訓練をクリアしなければ強くなれない。早くランクを上げて兄に近付かなければ。 「ふー……ふー……」  何度か深呼吸し、アクセルはもう一度気合いを入れて水の中を歩いた。ザブザブと進む度に刺すような冷たさが全身を襲ってきたが、その場をぐるぐる歩いていたら次第に冷たさが薄れてきた。  身体が慣れてきたのか何なのか、悪寒も吐き気も消え去り、「今なら滝の下に行けるんじゃないか」という謎の自信まで湧いてくる。  ――よし……!  滝に三〇分間打たれるのが第一の修行なのだ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。  アクセルは水の中を歩き、滝の下に向かった。滝に近付くにつれて水飛沫が真正面から飛んできて、今まで濡れていなかった上半身までびしょ濡れになってくる。冷たさのせいで裸の上半身がしもやけっぽく赤くなってしまった。

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