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第803話
――というか、今何分だろう。体感的には10分以上打たれてる気がするけど……。
こういう時って、大抵はまだ3分も経過していなかったりする。自分にとって辛いことをしている時ほど、時間が過ぎるのが遅く思えるのだ。
せめて楽しいことを考えていれば、時間経過も早いかもしれない。
そう思い、アクセルはこの先の楽しみについて考えることにした。この修行が終わる頃には夕方になっているだろうから、兄と一緒に夕食の準備をしなければ。
ピピのための野菜スープを煮込んで、傍らでステーキを焼く。そう言えば、ステーキ用の肉ってまだ残ってたっけ? 今朝も鹿肉を焼いてしまったから、残りは猪の干し肉しかないかもしれない。もし干し肉しかなかったら、日が暮れる前に市場に駆け込んで夕食用のステーキ肉を買っておかなくては。兄が拗ねてしまう。
夜は……さすがにそのまま寝るよな? 昨夜あんなにやりまくったんだし。兄は非番かもしれないけど、自分は確か見回り当番が入ってたはず。眠れない夜を過ごして仕事に支障が出たら、他の人に申し訳なさすぎる。
……でも絶倫な兄のことだから、手を出してくる可能性がゼロとは言えない。今まであれこれ理由をつけて我慢していたせいか、一度解禁してしまうといろいろ際限がなくなるみたいだ。いいのか、悪いのか……。
――交わるのもいいけど、俺はやっぱり兄上と死合いがしたいんだよな……。
自分のランクはまだ九七五位である。三位の兄と死合いを行うにはもっとランクを上げなければならない。
もし兄と本気で死合えたら、永遠に忘れられない思い出になるだろう。憧れ続けた兄が全力でこちらに斬りかかり、自分もまた全力でそれに応える。肉が切れ、血が飛び、互いに力尽きて動けなくなるまで刃を交えるのだ。
それを想像しただけで身体が熱くなり、血が滾ってぞくぞくしてしまう。
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