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第804話
「弟君 、大丈夫か? しっかりせよ」
「ハッ……!?」
アクセルは我に返って目を開けた。気付いた時には、滝の近くの地面に寝ている状態だった。
ガバッと身体を起こし、周囲を見回す。
「えっ? あれ? 俺……」
「だから忠告したであろう。無理は禁物だと」
「あの……ケイジ様、一体何が……」
「滝に打たれながら気を失っていたのだ。あのまま放置していたら本当に棺送りになっていたぞ」
「えっ……!? す、すみません……」
何てことだ。修行中に気絶してしまうなんて。しかも気絶したことにも気付いていないなんて、間抜けにも程がある。
まだ陽は暮れていないから、そう長い時間気を失っていたわけではなさそうだけど、それにしたって……。
――はあ……まだまだ修行が足りないな……。
アクセルはがっくり肩を落とした。
気を失ったこともショックだが、滝修行という基本中の基本で気絶してしまったことが何より悔しかった。確かに水は冷たかったし重かったけれど、これはケイジのいう基礎訓練の初歩である。上位ランカーは当然のようにこなしているメニューだ。
それをクリアできなかったどころか、知らない間に気絶していたということは、まだまだ自分は上位に食い込める実力ではないということだ。やはりなとは思うけれど、毎日修行しているのに、ちっとも力がついていなくてさすがに落ち込んでしまう。
すると、ケイジが淡々と言った。
「そう気を落とすな。私にとっては基礎訓練だが、他の者にとっては死と隣り合わせの過酷な訓練なのだ。水に入ってすぐに滝の下に移動できただけでもたいしたものだ」
「えっ? そうなんですか?」
「うむ。普通の者はこの水に馴れるだけで丸一日はかかる。最初から三〇分間も耐えられるなどと思うな。力は一朝一夕には身に付かぬものだ」
「は、はい……」
そうなのか。この滝修行はそんなに難しいものだったのか。まあ確かに、普通の滝修行とは比べ物にならないくらい大変だったけど。
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