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第806話
「ああ、やっぱりここだった!」
修行場に兄が駆け込んできて、アクセルはそちらに目をやった。
兄はこちらにやって来ると、腰に手を当てて見下ろしてきた。
「お前ね、出掛けるなら置き手紙くらい書いてからにしなさい。あちこち捜しちゃったじゃないか」
「す、すまない……。ケイジ様に置いていかれたら修行にならないと思って……」
「というかお前、本当にケイジと一緒に修行しようとしたの? それはさすがに無謀じゃない?」
……やはり兄の目から見ても、ケイジの修行は無謀であるらしい。
「ケイジも、『お前にはまだ無理だ』って止めてくれればよかったのに」
「『強くなりたい』と言ってくる者を拒否するのは無粋であろう。最初から私と同じメニューをこなす必要はない。自分のペースで強くなればよいのだ」
「そうだけど、うちの弟は真面目だから自分の限界を無視して修行に打ち込んじゃう時もあるんだよ」
……図星すぎて耳が痛い。
ケイジは腕を組み、やや皮肉っぽく言った。
「そもそも、フレイン殿が特別訓練をすっぽかしたから、代わりに弟君が鍛錬することになったのだがな。最初からフレイン殿が訓練に参加していれば、弟君が参加することはなかったはずだ」
「あんな過酷な訓練、上位ランカーでも普通はサボっちゃうよ。どうしても付き合って欲しいなら、ミューかランゴバルトに頼んでもらいたいね」
ランキング一位と二位の戦士でないと付き合いきれない訓練って、どんな訓練なのだろう。想像できないのだが。
「ま、いいや。今日は弟が世話になったね。……アクセル、帰ろうか」
「あ……ああ……」
急いで立ち上がり、上の服を着てから改めてケイジに礼を言った。
「ケイジ様、今日はありがとうございました。あの、迷惑でなければまた修行に来てもいいですか?」
「うむ。この修行場は好きに使うとよい。これからも励め」
「はい! 頑張ります!」
ぺこりと頭を下げ、アクセルは兄を追いかけた。
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