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第807話
道すがら兄にこんなことを聞かれた。
「それで、どこまでやれたの?」
「いや、それが全然……。滝修行の段階でいつの間にか気絶してしまって」
「ええ? 大丈夫だったの? だから無理はするなっていつも言ってるのに」
「すまない……。俺も無理をしていたつもりは全然ないんだ。滝の下に入って集中するために違うことを考えていたら、気付かないうちに……」
「はあ……もう、世話の焼ける子だねぇ。そんなんじゃ一人で修行できないじゃない」
「兄上が一緒に修行してくれればいいんじゃないか?」
「基礎訓練くらいならいいけど、それ以上の訓練は遠慮したい」
などと、素っ気なく言う兄。余程ケイジの修行はやりたくないらしい。
――それにしても、兄上の足腰ってどれくらい強いんだろう……。
訓練は嫌がっているものの、ランキング三位だから少なくとも自分よりは強いに違いない。実際にどれくらい強いのか、ちょっと興味が湧いてきた。
「兄上」
「うん、何……」
兄が振り向く前に、アクセルはその背を思いっきり突き飛ばした。
「わあ!」
いきなり突き飛ばされた兄は前のめりに転倒するかと思いきや、すんでのところで踏ん張り、ぐぐっと身体を起こした。
「え、何事? 修行のしすぎで頭おかしくなっちゃった?」
「不意打ちでも転ばない……。やっぱり兄上は足腰が違うんだ……」
「はあ?」
「よし、俺も不意打ちで転ばないような足腰を作るぞ。明日からもっと頑張ろう」
「…………」
「あ、いきなり突き飛ばしてすまない。悪気はないんで許してくれ」
そう軽く謝ったら、兄はものすごく呆れた顔になった。やれやれと肩をすくめ、軽く首を振る。
「……お前、昔からそういうとこあるよね」
「えっ?」
「いや、こっちの話。……というか、足腰の強さならベッドの上でいくらでも見せてあげるのに、昨日のアレじゃ足りなかったの?」
「はっ……?」
兄がニヤリと口角を上げながらこちらに近づいてくる。
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