809 / 2205

第809話

 ――ダメだな、自分のことばかり考えてちゃ……。  ちょっと反省した。もっと周りのことに目を向けなくては、いずれ皆に愛想を尽かされてしまう。  アクセルは視線を落として、言った。 「俺が悪かったよ、ピピ。本当にごめんな。もう置いてけぼりにしないよう気をつけるから」 「ぴー……」 「今度一緒に山に行こうな。ピピの故郷の山を、俺も歩いてみたい。楽しみにしててくれ」 「ぴー」 「じゃあ、今から一緒に身体洗おうか。俺も鍛錬帰りだし、一緒にさっぱりしよう。それからブラッシングして、野菜スープ作ってあげるからな」 「ぴー♪」  そう言ったら、ようやくピピはこちらを向いて「うんうん」と頷いてくれた。  アクセルは早速外の水場で湯を沸かし、その間に石鹸やブラシ、スポンジやたらいを用意した。ピピは身体が大きいから、石鹸もたくさん必要だ。  沸かした湯をたらいに注ぎ込み、水で薄めて温度を調節する。 「ピピ、湯加減はどうかな」 「ぴ?」 「きみ、熱すぎるの苦手だろ? かと言って、ぬるすぎても風邪ひきそうだし。これくらいがちょうどいいと思うんだけど、どうだろう」 「ぴー♪」  ピピはふんふんと鼻面をたらいに近付け、次いで嬉しそうにこちらに頬ずりしてきた。こうしてあれこれ構ってもらえるのが楽しいみたいだ。  ――そうだよな……俺だって好きな人に構ってもらえるの、嬉しいし。  しばらく相手にされていなかったならなおさら、一緒に過ごす時間が楽しいに違いない。  これからはピピともたくさんの時間を過ごさなくては。 「おや、一緒に湯浴みかい? 楽しそうだね」  そこへ兄がやってきた。アクセルは顔を上げ、兄に言った。 「兄上はちょっと待っててくれ。湯浴みが終わったら昼ご飯作るから」 「それはいいけど、お兄ちゃんだけ仲間外れ? それは寂しいなぁ」 「でも兄上は汗かいてないだろ。鍛錬してきたわけじゃないんだから」

ともだちにシェアしよう!