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第809話
――ダメだな、自分のことばかり考えてちゃ……。
ちょっと反省した。もっと周りのことに目を向けなくては、いずれ皆に愛想を尽かされてしまう。
アクセルは視線を落として、言った。
「俺が悪かったよ、ピピ。本当にごめんな。もう置いてけぼりにしないよう気をつけるから」
「ぴー……」
「今度一緒に山に行こうな。ピピの故郷の山を、俺も歩いてみたい。楽しみにしててくれ」
「ぴー」
「じゃあ、今から一緒に身体洗おうか。俺も鍛錬帰りだし、一緒にさっぱりしよう。それからブラッシングして、野菜スープ作ってあげるからな」
「ぴー♪」
そう言ったら、ようやくピピはこちらを向いて「うんうん」と頷いてくれた。
アクセルは早速外の水場で湯を沸かし、その間に石鹸やブラシ、スポンジやたらいを用意した。ピピは身体が大きいから、石鹸もたくさん必要だ。
沸かした湯をたらいに注ぎ込み、水で薄めて温度を調節する。
「ピピ、湯加減はどうかな」
「ぴ?」
「きみ、熱すぎるの苦手だろ? かと言って、ぬるすぎても風邪ひきそうだし。これくらいがちょうどいいと思うんだけど、どうだろう」
「ぴー♪」
ピピはふんふんと鼻面をたらいに近付け、次いで嬉しそうにこちらに頬ずりしてきた。こうしてあれこれ構ってもらえるのが楽しいみたいだ。
――そうだよな……俺だって好きな人に構ってもらえるの、嬉しいし。
しばらく相手にされていなかったならなおさら、一緒に過ごす時間が楽しいに違いない。
これからはピピともたくさんの時間を過ごさなくては。
「おや、一緒に湯浴みかい? 楽しそうだね」
そこへ兄がやってきた。アクセルは顔を上げ、兄に言った。
「兄上はちょっと待っててくれ。湯浴みが終わったら昼ご飯作るから」
「それはいいけど、お兄ちゃんだけ仲間外れ? それは寂しいなぁ」
「でも兄上は汗かいてないだろ。鍛錬してきたわけじゃないんだから」
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