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第811話

 ピピは力強く鳴いて、おとなしく湯を浴び続けた。  全身を水洗いし続け、少し汚れが薄れてきたところで石鹸を濡らして擦り、本格的に毛並みを洗ってやる。  ここでも汚れっぷりが如実に出てきて、泡立ちのいい石鹸がなかなか泡立たなかった。やっと泡立っても薄汚れていたりして、かなり汚れが溜まっていたことが目に見えてわかった。  ――ああ……ピピ、マジでごめん……。  何というか、この汚れを見ると自己嫌悪に陥る。本当に自分は飼い主失格だ。 「……ピピ。今度新しく外に大きなひのき風呂でも作っとくよ。そしたら露天風呂みたいに一緒に入れるし。時間を見つけて兄上と作ってみる」 「ぴー♪」 「あと、ピピ専用のうさぎ小屋な。あれもちゃんと作り直すよ。もっとゆったり設計した方が、ピピも居心地いいもんな」 「ぴー」  そんなことを話しつつ、アクセルはせっせとピピの汚れを落としていった。石鹸をまるまる一個使ってピピの全身を洗い、ザザッと湯で流してまた新しく石鹸を使う。  それを二回くらい繰り返したら、ようやく綺麗なモコモコの泡が立ち始めた。石鹸を使い切ってしまいそうだったので、ちょっとホッとした。  ――後で石鹸も買い足しておかないとな……。  露天風呂やうさぎ小屋を作るための木材、いつもの食料……あと、普段着もか。買わなければならないものは多そうだ。 「ぴー♪」  最後にザバーッとピピの全身に湯をかけ、泡を綺麗に洗い流した。その後、清潔なタオルで毛並みの水分をわしゃわしゃと拭き取り、完全に乾いたところで丁寧にブラッシングしてやる。  その間、ピピは気持ちよさそうに目を閉じていた。 「ほらピピ、終わったぞ。これでだいぶさっぱりしたんじゃないか?」 「…………」 「……ピピ?」  返事がないので正面に回り込んで様子を窺ったところ、ピピは目を閉じているのではなく眠っているようだった。耳をすましたら、「すぴー……」と規則正しい音がしている。

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