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第812話
「……ふふ」
アクセルは思わず噴き出した。
本当にピピは可愛い。癒される。賢いしいい子だし、もっと大事にしないとバチが当たりそうだ。
アクセルはなるべく音を立てないよう使ったスポンジやたらい、石鹸を片付け、それから家に戻ってサッと湯浴みした。本当はピピの近くで湯浴みしたかったけれど、寝ている側でお湯をバシャバシャやったらピピが起きてしまうかもと思ってやめた。
「兄上、お待たせ」
髪を拭きながらキッチンに入ったら、兄は一人でせっせと何かを調理していた。フライパンでハムやチーズを挟んだ食パンをトーストしている。ホットサンドだろうか。
「昼ご飯、作っておいてくれたのか」
「まあね。一人でボーッとしてても時間の無駄だし。昼食だから簡単なものでいいやと思って、適当に作っておいたよ」
「そうか……ありがとう。何かいろいろすまないな」
「ま、うちの弟は世話が焼けるからね。そこがまた可愛いんだけど」
「すみません……」
兄に迷惑をかけていることは自覚している。きっとこれは死んでも直らない。
アクセルは苦笑いし、野菜スープを煮込む大きな鍋を用意した。ピピの好きなニンジンとブロッコリーをたくさん入れてあげなくては。
ありったけの野菜を切り、鍋に投入して水を入れ、そのままぐつぐつ煮込みつつ、アクセルは聞いた。
「兄上、ひのき等の材木は市場で売ってるだろうか?」
「材木? また木彫りでもするのかい?」
「いや、外に露天風呂でも作ろうかと。あと、ピピのうさぎ小屋もリニューアルしたいんだ。手伝ってくれるか?」
「ああうん、いいけど……そういう材木はあまり売ってないかもよ。自分で山に切りに行かないと」
「ええ? 元木こりの戦士とかいないのか? 薪や丸太は売ってるのにな……」
「薪は拾うだけだし、丸太は切るだけだから。でもそういう材木は、ちゃんと丁寧に切り出さないといけないからね。めんどくさいんじゃない?」
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