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第814話

「木彫りはわかるが、ポストはどうかな。そんなの作った覚えないぞ」 「あれ? お前、バルドル様のところに人質に出てた時、ポスト作り直したって言ってなかったっけ? バルドル様の屋敷近くに、お前が作った真新しいポスト立ってるのに」 「えっ、そうだったかな……? その辺の記憶はまだ曖昧で……」 「そっか。バルドル様とホズ様に会ったら、いろいろ思い出すかもしれないね。帰ったら手紙出しとこうか?」 「ああ、よろしく頼む」  バルドルやホズも、自分の復活に手を貸してくれたという。以前も何かと世話になったみたいだし、お礼がてら挨拶には行ってみたい。  そんなことを考えながら、家に戻った。  帰宅した後は買ったものを整理整頓し、余った時間で雑用や鍛錬に打ち込んだ。ユーベルの剣の舞は明日の予定だから、それまでになるべく鍛錬しておかないと。 「バルドル様に手紙書いたんで、ポスト入れてくるね」  ピピと走り込みをしている時、兄に声をかけられた。世界樹(ユグドラシル)のところにあるポストだし、行って帰ってくるだけだから自分はそのまま鍛錬を続けることにした。  だが、行って帰ってくるだけのはずが、いつまで経っても兄は戻って来なかった。  ――兄上、遅いな……。  兄が出て行ったのは夕方前だ。それなのに、陽が落ちてもまだ戻って来ない。一体何をしているのだろう。兄はたくましいから自分みたいにトラブルに巻き込まれることはないだろうけど、さすがにここまで遅いと心配になる。  ちょっと捜しに行こうか。万が一何かがあったら大変だ。  かといって行き違いになるのも困るし、自分が出て行って変な罠にかかったらそれこそ本末転倒である。  でも兄の事は心配だし……何かあったら困るし……どうしよう、どうしよう……。 「ただいまー」 「……!?」  間延びした声が聞こえた後、兄が堂々とリビングに入ってきた。

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