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第816話

「あー、やめやめ! 悩んだってしょうがないだろ、俺!」  一人になるとついごちゃごちゃ考えてしまうけど、いくら考えたところですぐさま兄のように強くなれるわけではないのだ。そもそも兄とは十一も年齢差があるんだから、そう簡単に追いつけるはずがない。  まずはケイジに言われた通り、足腰を鍛えること。それから基礎体力をつけて、狂戦士モードを自由に使えるようになること。そうやって少しずつランクを上げていこう。  先程買い物してきたばかりなので、食材は山ほどあった。アクセルはとりあえず兄が喜びそうな肉料理を中心に、献立を考えることにした。  今朝は余った肉を焼いてステーキにしたから、夜は煮込んでシチューにでもしようか。そういや最近イノシシのシチューを食べていないな。せっかくのヴァルハラ名物だし、たまにはそれにしてみるか。煮込み料理ならピピの食事と一緒に作れるし、一石二鳥である。  アクセルは早速イノシシの塊肉を取り出し、一口サイズにザクザク切っていった。ニンジンやブロッコリー、じゃがいもに玉ねぎ等も切り刻んだ。こうやって一心不乱に食材を切り刻むのは、いいストレス発散になる。  肉や野菜を全部刻み、大鍋に投入してひたすらぐつぐつ煮込んだ。煮込むにつれてイノシシの肉から灰汁が出てくるので、それも丁寧に取り除く。その後、専用のルーを入れてシチューらしく味を調え、またしばらく煮込んでいると兄が風呂から上がってきた。 「あっ、いい匂いがするね。今日はシチューかい?」 「ああ。最近食べてないと思ってな」 「確かに。お前が作るシチュー、宴で出て来るのより好きだな」 「ありがとう。……でも、よくよく考えたら明日宴に行くんだよな。メニューが被ってしまった」 「いいよ。というか、のんびりご飯食べている余裕はないでしょ。ユーベルが斬りかかって来るんだから」 「……それもそうか」  ふと、以前体験した剣の舞を思い出した。あの時は回避するのに精一杯で、他のことに注意を払う余裕もなかった。あんな状況で呑気に食事をしていられるのは、ヴァルハラの戦士でもミューくらいなものだろう。

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