819 / 2206
第819話
「んー、なんか刺激が足りない気がして。せっかくだから、何か担ぎながら打たれようかと思ったんだー。どれにしようかなー」
「……そうか。ミューはすごいな」
「あ、どうせならアクセル、僕の上に乗っかるー? それなら僕の刺激にもなるし、アクセルが気絶してもすぐにわかるし。お互いWIN-WINだよねー」
「……いや、それはちょっと」
メリットがあるのはわかるが、下にミューがいたら全然集中できなさそうだ。
気を取り直して、アクセルはそっと水の中に入った。相変わらず水は冷たく、身体の内側から凍り付いていくような感覚がする。
それを我慢して恐る恐る滝の下に入ったら、上から石のように重い水がドドドド……と身体を打ってきた。頭のみならず肩や首にも直撃し、慌てて力を込めて刺激に耐える。
重い上に冷たい水に三〇分耐えるというのは、簡単なようでかなり根性が必要だ。
――ケイジ様の時も思ったけど、一体どうやって水に順応してるんだろう……。
ミューもケイジも、水の冷たさをまるで感じていないように見える。「心頭滅却すれば~」云々とケイジは言っていたけれど、それ以外に何か秘訣があると思えてならない。
上位ランカーは、一体どうやって寒さを防いでいるのだろう……。
「ところでアクセルは、今日の宴に出席するのー?」
めちゃくちゃ太い丸太を当たり前のように三本担ぎ、ミューは滝の下に入ってきた。
――何というか、やっぱりミューはちょっと格が違うな……。
自分より遥かに小柄な少年なのに、どこにそんな筋力があるのか不思議でならない。感心するより呆れてしまって、悔しいなどと欠片も思わなかった。
アクセルは笑いながら答えた。
「するよ。ユーベル様が舞を披露するんだろ?」
「うん、そう言ってたー。今回は下っ端も引き連れてくるみたいだから、すごく過激なものになるんじゃないかなー」
「やっぱりそうか……。死なないように頑張らないとな……」
ともだちにシェアしよう!