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第820話
「大丈夫じゃない? アクセル、ちゃんと強くなってるもん」
「そうかなぁ……。自分じゃよくわからないんだが」
「なってるよー。なんというか、下半身の筋肉がビシッとしてきた感じがするんだよねー。今までもシュッとしてたけど、それよりたくましくなってきたというか」
言われてみれば、ズボンの太もも周りやふくらはぎがちょっとキツく感じるような……?
ミューは笑いながら続けた。
「本人はあまり気付かないけど、その身体つきを見れば毎日鍛錬頑張ってることくらいすぐにわかるよー。筋肉量は間違いなく増えてると思うなー」
「そ、そうか……?」
「うん。まあ頑張りすぎても身体壊しちゃうから、鍛錬もほどほどがいいけどね。僕らはケイジやランゴバルトみたいに、体格に恵まれてるわけじゃないからさー。よい子はあの二人の真似しちゃダメだよー」
「…………」
アクセルは滝に打たれながら考えた。
――確かに、ケイジ様やランゴバルト様はもともと体格が優れているからな……。
熊のような体格の大男は、ごく普通の鍛錬をするだけで一般人よりずっと強くなれる。保有できる筋肉量やスタミナがもともと桁違いだからだ。
では、ミューは一体どうやってランキング一位まで上り詰めたんだろう。ケイジどころかアクセルよりもずっと小柄な体格なのに、どこにそんな力があるのだろう。
「ミューは一体どうやって強くなったんだ?」
「どうって……別に普通だよ。特別なことはしてないよ」
「そんなことないだろ。体格的にも不利な状況で、どうやってケイジ様やランゴバルト様を打ち負かしてきたんだ?」
「んー……」
ミューはしばらく何かを考えているようだった。
どんな言葉が出て来るのかと待っていたら、彼はこんなことを言い出した。
「まあ僕は、お世辞にも大きい身体をしてるわけじゃないからねー。真ん中くらいまで上がった時、ちょっと伸び悩んだことはあるなー」
「本当か? それでどうしたんだ?」
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