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第823話
「僕たちが治安を改善する前は、ランキングも結構曖昧でー。特に上位陣はなかなか変動しなかったんだよねー。死合いで負け続けていても、不戦敗ばっかりでも、ランクが落ちないままずーっと居座ってるの。それでなんか知らないけど威張ってるんだよー。……えっと、そういうのなんて言うんだっけ?」
「……老害か?」
「そうそれー。もう老害すぎて困っちゃってさー。それで、戦士歴は短いけど実力のある人を集めて改革を始めたってわけー。今の上位ランカーは、だいたいがその時の中心人物だよー」
なるほど、そういう歴史があったのか。
かつて兄に少しだけ聞いた事があるが、兄が来たばかりのヴァルハラは、治安が悪くてどうしようもなかったらしい。兄はあの通り美人で目立つせいもあり、獣のような連中に絡まれることもあったそうだ。……想像したくもないが。
――まあ、何にせよ改革が成功したのはいいことだよな。
老害と呼ばれる古株が一掃され、実力主義のシステムに変更されたのはありがたい。戦士たるもの、常に切磋琢磨しながら実力を磨き続けるべきだ。そうでなければ、オーディン様の眷属 失格である。
「……ん? じゃあランゴバルト様は? あの人は一〇〇年以上の歴があるって聞いたぞ? 古株に入るんじゃないのか?」
「あー、確かに古株だねー。でもランゴバルトは、強くなるための努力は惜しまないから。性格はちょっとアレだけど、実力もないのに上に居座って威張り散らしてる老害とは違うんだよねー」
「ああ……それもそうか」
あの人には狩りの最中に殺されかけたが、その代わり滅茶苦茶強かった。人間性よりも実力が優先されるヴァルハラにおいては、あれでも問題ないのかもしれない。
ミューは楽しそうに続けた。
「でね、その老害がいっぱい集まっている時を見計らって、宴を襲撃したんだー。宴だったらみんな油断してるし、酔っ払って前後不覚になってる連中もいるしで、掃討が楽だったんだよねー」
「そ、そうなのか……」
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