824 / 2207

第824話

「それで、僕らは普通の武器でザクザク斬り刻んでいったけど、ユーベルは『どうせなら華やかに散らしましょう』とか言って、踊りながら斬っていったんだー。確かにその時のユーベルは華麗だったし、血飛沫も舞ってて綺麗だったなー。ユーベルも気に入ったらしくて、そこから『剣の舞』を編み出したんだってー」 「へえぇ……そうだったのか……」  ユーベルの剣の舞が、何故ああも危険極まりないのか、やっとわかった。宴の余興にしては過激だし死者も多数出るし、不思議に思っていたのだ。  ――もともと、参加者を全員殺すのが目的だったからか……。  武器と防具をきちんと装備して宴に出るよう忠告されるのも、納得だ。こちらも向こうを殺すつもりで参加しないとあっと言う間にやられてしまう。 「ありがとう、ミュー。タメになる話を聞けたよ」 「そう? 特に面白くなかったと思うけど、アクセルの役に立ったならよかった。宴、頑張って生き残ってねー」 「ああ。何としても生き残ってみせる」  そんな会話をしていたら、家の前に着いていた。やはり誰かと会話しているとあっと言う間だ。寒さも忘れた。 「おや、おかえり……ってミューじゃないか。どうしたんだい?」  出迎えてくれた兄が、目を丸くする。ミューは朗らかに答えた。 「そこでアクセルと会ったから、一緒に滝に打たれてたんだー。アクセルね、今日はちゃんと三〇分滝に打たれていられたんだよー。偉いよねー」 「い、いや……ミューが横にいてくれたおかげだ……」  喋っている間にも、唇が震えて奥歯がカタカタする。今更ながら、どれだけ体温を奪われていたかに気付いた。早く湯を浴びないと凍死しそうだ。 「お湯は沸いてるよ。ゆっくり温まって来なさい。そのままだと風邪ひいちゃう」 「あ、ありがとう……」  アクセルはガタガタ震えながら浴室に飛び込んだ。お湯の張っている湯船に入った途端、足先がビリビリ痛んだ。

ともだちにシェアしよう!