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第827話
時間になったので、二人は宴会場に向かった。
広々とした宴会場には既に何人もの戦士が集まっていて、皆それぞれの武器を携帯していた。
それは上位ランカーも例外ではなかった。
「よう、お二人さん。宴に出るとか珍しいな」
「今日は楽しい踊りが見られるからね。ジークも、宴に出るのは久しぶりじゃない?」
「まあな。でも今夜は特別だ。ユーベルの舞、どんだけパワーアップしたか楽しみだぜ」
「そうだね。お互い、無傷で生き延びられるといいね」
「何なら無傷で終われるかどうか、賭けてみるか? ちなみに、マントが切れても傷ひとつに含まれる」
「ええ? それ私の方が不利じゃないか。じゃあジークは髪の毛一本でも切られたらアウトね」
「よし、ここはお互い譲歩しよう。血を出さなければセーフ。これでどうだ?」
……そのルールだとしても、アクセルは一発でアウトになりそうだが。
――まったく、上位ランカー同士の話にはついていけないな……。
半ば呆れながら聞き流していたら、ジークがこちらに目をやった。全身を眺め、やや失笑して言う。
「それにしても、弟くんは随分な重装備だな。そんなんで動けるのか?」
「いえ、それは何とも……。個人的にはこんなの着たくなかったんですけど、兄が着ていけっていうのでやむを得ず……」
「へえ? よりにもよって今日着させるなんて、なかなかのサディストだな。フレインは相変わらず、弟くんを苛めるのが好きだねぇ?」
「やだな、人聞きの悪いこと言わないでよ。アクセルが足腰強化に励んでるから、実践で確かめたかっただけさ」
「そうか。まあ足腰は戦いの基礎だからな。強化するに越したことはない。頑張れよ」
「はい……ありがとうございます」
そう言ってジークは、悠々と立ち去って行った。
その背を見ながら、兄が言った。
「何だかんだでジークも気合い入ってるじゃないか。靴がいつもより重くなってる。あれ、鍛錬用の特殊な靴だね」
「え? そうなのか?」
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