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第836話
兄はそれに気づき、こちらに近づいて見下ろしてきた。
「ありゃ。お前、そんなところにいたの? 瓦礫の間でかくれんぼ?」
「……それ、明らかに違うってわかってて言ってるだろ」
「それにしても、随分ひどいことになってるねぇ。腹がぱっくり割れてるじゃないか。内臓が出てきそうだよ」
「うう……面目ない……」
「まあ、私も片腕吹っ飛んでるけどさ。じゃ、これから泉に行こうか」
兄は片手でひょいとアクセルを抱き上げると、そのまま肩に担ぎ上げた。自分も片腕がないのに、よく他人を担げるものだと感心してしまった。
もっとも自分は片足をなくしているので、担いでもらわないと泉まで行けないのだが、そこもちょっと情けなく思う。せっかく生き残れたのに歩けなくて運ばれるなんて、何だかかっこ悪い。
泉に向かって歩いている最中、兄が明るく話しかけてきた。
「お前、あの状況でよく最後まで生き残ったね。お兄ちゃんは鼻が高いよ」
「いや、そんな……。生き残ったって言ってもほぼ戦闘不能だし、ユーベル様にはほとんど攻撃入れられなかったし……まだまだだと思い知ったよ」
「何言ってるの。あれでもユーベルはランキング四位の強者なんだよ? それに対してあそこまで食いついていけたんだから、たいしたものさ。他の連中はほとんど何もできずにバラバラにされてたもんね」
「そうかな……」
「そうだよ。正直、私もお前がここまでやれるとは思っていなかった。この調子なら、上位七位以内に入るのも夢じゃない。もっと自信を持ちなさい」
本当に強くなっているかは、自分ではよくわからない。途中で怖気づきそうになったし、狂戦士モードだって兄たちの戦いっぷりを見たからこそなれたようなものだ。自分一人でまた同じことをやろうとしても、上手くできないんじゃないかと思う。
でも、生き残れたのは事実だ。
ほとんどの戦士が死体となって転がっている中、自分はちゃんと生き残ることができた。ランキング四位の戦士に襲われても、どうにか制限時間内まで堪えることができた。
それだけは、評価してもいいかもしれない。
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