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第838話
そんな会話をしていたら、泉に到着した。先客はいなかったが、これから宴で生き残った戦士たちがたくさん水浴びに来るだろう。それまでに全身元通りになればいいが。
「棺で寝て来た方がよかったかなぁ」
と、兄が泉に浸かりながら言う。
「棺は入る人がたくさんいるから、きっと満員状態だよ。俺たちは泉で我慢しよう」
「早く治るといいねぇ。でないと他の人が来ちゃう」
「来てもいいじゃないか」
「いいけど、どうせなら私はお前と二人がいい」
そんなことを言われ、不覚にもキュンとなった。兄と公式死合いを行うためにも、早く強くなりたいと思った。兄と二人でやることなら、きっと死ぬほど楽しいに違いない。
「そう言えばお前、明日は何か用事あったっけ?」
「死合いや仕事は特にないが……鍛錬はするつもりだぞ」
「そっか。何もないならピピちゃんと山に行くのもいいかと思ったんだけど」
「あー……。そう言えば、ピピに『今度山に遊びに行こう』って約束してたんだよな」
「そうそう。単純な鍛錬ばかりだと飽きるじゃない? 山登りなら足腰も鍛えられるし、ついでに材木探しもできるよ。お前、庭にピピちゃん専用の檜風呂作りたいって言ってたよね?」
「ピピ専用ではないけど、風呂は作りたいな」
市場に材木を見に行ったことがあるが、置いてあるのは暖炉用とか湯沸かし用の丸太や小枝ばかりで、何かを作るためにピシッと切り出された材木は置いていなかった。
だから本当に外に風呂を作るつもりなら、自分で材木探しに行かないとダメだなと思っていたのだ。
ピピと山に遊びに行くついでに材木も探せるなら、一石二鳥である。鍛錬までできるなら一石三鳥だ。
「わかった、明日はピピと山に行こう。ピピもずっと留守番ばかりじゃつまらないだろうし」
「うんうん、それがいいよ。楽しみだねぇ」
「材木を運ぶ時は、兄上も手伝ってくれよ?」
「え? お前が全部担いで下山するんじゃないの?」
「……あなた達上位ランカーと下っ端ランカーを一緒にしないでくれ」
少なくとも自分は、ミューのように太い丸太を三本も担ぎながら移動することはできない。
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